王衍 (西晋)

王衍（おう えん、256年 - 311年）は、西晋時代の政治家・武将であり、その生涯は西晋の盛衰を映し出す鏡のような存在でした。琅邪郡臨沂県（現在の山東省臨沂市）出身で、容姿端麗で聡明だったと伝えられています。竹林の七賢の一人である王戎を従兄に持ち、王敦や王導を族弟に持つ名門一族の出身です。

幼少の頃からその才能は際立っており、山濤からは将来を危惧されるほどの存在感を示していました。若くして司馬炎（武帝）や王戎からも高く評価され、黄門侍郎に任じられるなど、順調に出世の階段を上っていきます。しかし、王衍は政治の実務よりも老荘思想に基づく清談に熱中し、その弁舌と美貌で人々を魅了しました。彼の清談は一種のブームとなり、西晋の政界全体が清談に染まるほどでした。

しかし、当時の西晋は八王の乱や永嘉の乱といった内憂外患に苦しんでいました。王衍の清談は、平和な時代であれば賞賛されたかもしれませんが、混乱期においては国を顧みない無責任な行為と見なされました。王衍自身も、その才能を国政に生かすことなく、清談に明け暮れたことを後悔していたのかもしれません。

306年に八王の乱が終結すると、王衍は司馬越に接近し政権に参加します。王弥・石勒の侵攻を破るなど、武将としても一定の活躍を見せましたが、司馬越と懐帝の対立が表面化すると、司馬越と共に項城に逃亡。司馬越の死後、軍の指揮を任されますが、石勒の襲撃を受け大敗。捕虜となり、石勒に命乞いをしますが、その弁明は石勒の怒りを買い、圧殺されました。享年56歳。

王衍の死後、西晋は求心力を失い、石勒の侵攻により洛陽が陥落。事実上滅亡しました。東晋の桓温は、華北を眺めながら王衍らの清談が国家を滅ぼしたと批判しています。

王衍の生涯は、個人の才能と時代の要請とのずれ、そして政治家の責任の重さを教えてくれます。彼の清談は、西晋の文化を彩った一方で、国家の危機を招いた要因の一つとも言えるでしょう。彼の死は、西晋滅亡の象徴として、歴史に刻まれています。

家族
妻：郭氏
子：王玄
* 娘：王景風、王恵風

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