瑞林寺 (美濃加茂市)

瑞林寺

瑞林寺は、岐阜県美濃加茂市蜂屋町に位置する臨済宗妙心寺派（東海門派）の寺院です。山号は龍雲山と称します。

歴史

瑞林寺は、室町時代後期の文明年間に、仁済宗恕によって開山されました。当時の美濃国守護であった土岐成頼からの寄進を受け、悟渓宗頓を招いて創建されたと伝えられています。

柿寺の由来

瑞林寺は別名「柿寺」とも呼ばれています。これは、二世住職の仁済宗恕が、この地特産の蜂屋柿を室町幕府十代将軍足利義稙に献上した際、寺領10石と「柿寺」の称号を授かったことに由来します。また、五世住職の明丘も、豊臣秀吉に蜂屋柿を献上し、永楽通宝50貫と寺領10石を得ました。さらに、秀吉から何か望みはないかと尋ねられた際、「労役に苦しむ村の百姓を救ってほしい」と願い出たところ、蜂屋村に対する諸役御免の証文を得ることができたとされています。

慶長5年（1600年）には、関ヶ原の戦いの際に徳川家康が蜂屋村を訪れた際、村の百姓衆が蜂屋柿を献上したところ、家康は「大柿が手に入った」と喜び、それまでの蜂屋村の特権を認めたという逸話が残っています。蜂屋柿は渋柿の一種で、実が大きく種が少ないのが特徴です。古くから高貴な人物に献上されていたため、「堂上柿」とも呼ばれています。

慶長8年（1603年）には火災により焼失しましたが、その後再建されました。正徳6年（1716年）には、中御門天皇より仁済宗恕に「本覚霊照大師」の諡号が贈られました。安永8年（1779年）には再び火災に見舞われましたが、寛政年間には復興し、享和2年（1802年）には開山堂も完成しました。

本尊と文化財

本尊は室町時代中期に作られた聖観世音菩薩です。内部には「ハラゴモリ仏」と呼ばれる胎内仏が納められており、御開帳の際にのみ拝観することができます。

寺は国道418号線から少し北に入った旧道沿いにあり、参道には県下十名所の石柱が立っています。石段の手前左には、「蜂屋元禄俳人之碑」があり、これは堀部魯九を頂点とする俳人たちの碑です。

本堂の左にある選仏場は、かつて修行僧が座禅をした場所で、そこには弥勒仏坐像が安置されています。この弥勒仏は、左手に五輪塔を持つのが特徴ですが、瑞林寺の像は地輪の基盤のみが残されています。

弥勒仏像は、永禄8年（1565年）に織田信長が堂洞合戦で堂洞城を攻めた際、首を抜かれて地中に埋められ難を逃れたという伝説が残っています。この像は、もともと裏山にあった大興寺に安置されていましたが、大興寺が廃寺となったため瑞林寺に移されたとされています。弥勒仏坐像は鎌倉時代末期の作で、岐阜県の重要指定文化財となっています。

瑞林寺には、他にも多くの文化財が所蔵されています。岐阜県指定の重要文化財としては、絹本著色涅槃図、紙本著色釈迦十六善神図、木造聖観音坐像、木造弥勒仏坐像があります。また、美濃加茂市指定の有形文化財として、無銘宝篋印塔、雪潭壁画、藤原利隆禁制などが挙げられます。

アクセス

車: 国道418号上蜂屋交差点より約5分。
電車: JR高山本線美濃太田駅より車で約15分。

末寺

瑞林寺は、室町時代末期に仁済や剛岳らによって近隣地域に多くの末寺を開きました。江戸時代には東泉寺と普門寺が加わりました。寛文7年（1667年）に尾張藩に提出した文書によると、門外寺家として蜂屋村の大梅寺と大興寺があり、末寺としては蜂屋村の小野寺、巣雲院、願成寺、東泉院、比久見村の妙楽寺、米田村の光徳寺、今泉村の正覚寺、田原の長源寺、太田宿の丹井庵、下古井村の霊泉寺、上古井村の禅隆寺、山之上の普門寺と西禅寺、廿屋村の福昌寺、錦織村の福寿寺、恵那郡の東光院、徳祥寺、上手向村の圓徳寺、土岐郡月吉村の大應寺、武儀郡下之保村の天王寺の20ヶ寺がありました。

その後、元文5年（1740年）には上蜂屋の薬師庵を末寺とし、寛保2年（1742年）には汾陽寺の寺家であった放牧軒を譲り受け、霊光院と改称して寺家としました。延享4年（1747年）に尾張藩寺社奉行に提出した書類には、さらに桐洞の林泉寺、太田の祥光寺、今泉の神護庵、上飯羽間の徳祥寺が末寺として記載されています。

主な末寺としては、以下の寺院が挙げられます。

東光院（岐阜県恵那市岩村町富田）: 元和年間に、瑞林寺七世の竺源玄盛が、大圓寺の再興を志して岩村を訪れましたが、当時の岩村藩主である松平乗寿がこれを拒んだため、その法嗣が代わりに東光院を中興し、末寺としたと伝えられています。
徳祥寺（岐阜県恵那市岩村町飯羽間）: 元和年間に、竺源玄盛が長福寺として上切塚屋の地に建立しました。竺源玄盛は寛永2年（1625年）に長福寺で遷化し、塔所は寺内の墓地にあります。
圓徳寺（岐阜県恵那市山岡町上手向）: 元和2年（1616年）、竺源玄盛が圓徳寺を再興し、瑞林寺の末寺としました。圓徳寺の十六世住職であった一渓（俗名：朝川義忠）は、32年間住持を務めた後、大正5年（1916年）に瑞林寺の住持となりました。
大應寺（岐阜県瑞浪市明世町月吉）
汾陽寺（岐阜県関市武芸川町）
林泉寺（岐阜県下呂市金山町）

参考文献

『美濃加茂市史 通史編』　美濃加茂市 1980年
『美濃加茂市史 民俗編』　美濃加茂市 1978年
『美濃国加茂郡誌』　岐阜県加茂郡役所　大正10年
『岐阜県百寺』　郷土出版社　1987年

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