瑞穂劇団

瑞穂劇団は、1942年2月に農林省の外郭団体である農山漁村文化協会専属の劇団として誕生しました。当時の社会情勢を反映し、食糧増産を推進する目的で設立された点が特徴です。劇団の団長には信欣三が就任し、宇野重吉、浮田左武郎、北林谷栄、清水将夫、三戸部スエ、織賀邦江、楠田薫、浜田寅彦といった、後に演劇界で名を馳せることになる俳優たちが集いました。1944年には永井智雄も入団しています。

瑞穂劇団は、地方公演を294回、東京公演を3回と、非常に精力的な活動を展開しました。大政翼賛会の指導のもと、食糧増産を目的とした激励運動の一環として、農村部を巡回し、演劇を通して国策を推進する役割を担いました。劇団はその後、日本移動演劇連盟に加盟し、その活動をさらに広げました。

しかし、1945年8月の敗戦により、瑞穂劇団はその活動を終え、解散しました。劇団員たちは、それぞれの道を歩み始め、新協劇団や俳優座といった、当時の演劇界を牽引する劇団に加入していきました。

瑞穂劇団は、戦時下の特殊な状況下で誕生し、短期間で解散した劇団ではありますが、その活動は当時の演劇界に大きな影響を与えました。所属していた俳優たちは、戦後の演劇界を支える重要な役割を担い、その後の演劇史に大きな足跡を残しています。

関連文献として、宇野重吉による「『瑞穂劇団』のころ」（『文学』岩波書店、1961年5月号）や、三戸部スエによる「瑞穂劇団と芙蓉隊（女優の証言<特集>）」（『悲劇喜劇』早川書房、1981年1月号）などが存在し、当時の劇団の様子を知る上で貴重な資料となっています。

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