田中和子 (競輪選手)

田中和子：昭和の女子競輪を彩った不世出のスター

田中和子（たなか かずこ、1933年9月21日 - 2014年4月26日）は、兵庫県出身の元女子競輪選手です。選手登録番号は405。旧姓のまま選手登録を行い、後に高橋和子となりました。

選手への道

友人の松下五月（旧姓）に誘われたことがきっかけで競輪選手を目指すことになった田中は、奈良県自転車振興会が実施していた選手登録検定に合格し、奈良支部所属として選手生活をスタートさせました。

デビューと快進撃

1950年9月、取手競輪場でデビュー戦を迎え、初出走初勝利を飾ります。その後のレースでは落車に見舞われながらも決勝に進出し3着入賞を果たしました。当時、大学卒の月給が約9000円だった時代に、デビュー戦だけで2万円もの賞金を獲得したという記録が残っています。

デビュー当初は神奈川の渋谷小夜子が圧倒的な強さを見せており、田中の存在はやや影に隠れていました。しかし、1952年に川崎競輪場で開催された第6回全国争覇競輪で、田中は渋谷らを破り、初のタイトルを獲得しました。渋谷が引退すると、田中はまさに独壇場。特別競輪で15回もの優勝を飾り、後続を大きく引き離して1着でゴールするレースを何度も見せました。年間賞金女王にも5回輝き、1952年には昭和期の女子競輪で最高となる1,852,220円もの賞金を獲得しています。

女子競輪初の全冠制覇

特筆すべきは、男子選手でも1988年の井上茂徳まで達成者がいなかった「全冠制覇」を、女子競輪選手として唯一1955年に達成したことです。その驚異的な強さから、昭和期の女子競輪（1949年 - 1964年）を代表する選手として、今もなお多くの人に記憶されています。また、トップスターの一人であった高橋恒と結婚後も選手生活を続けました。

引退とその後

1960年限りで引退を表明し、1961年4月25日に選手登録を消除。田中が引退したことで、女子競輪はスター選手不在となり、廃止へと向かう流れを加速させたと見られています。引退後は、西宮市に住居を構え、甲子園競輪場内の食堂経営者として第二の人生を歩みました。

主な獲得タイトル

1952年：第6回全国争覇競輪（川崎競輪場）
1954年：第5回高松宮妃賜杯競輪（大津びわこ競輪場）、第9回全国争覇競輪（川崎競輪場）
1955年：第6回高松宮妃賜杯競輪（大津びわこ競輪場）、第9回全国都道府県選抜競輪（大宮競輪場）、第10回全国争覇競輪（大阪中央競輪場）、第3回競輪祭（小倉競輪場）
1956年：第10回全国都道府県選抜競輪（名古屋競輪場）、第7回高松宮妃賜杯競輪（大津びわこ競輪場）、第11回全国都道府県選抜競輪（神戸競輪場）
1957年：第8回高松宮妃賜杯競輪（大津びわこ競輪場）
1958年：第14回全国都道府県選抜競輪（花月園競輪場）、第15回全国都道府県選抜競輪（一宮競輪場）
1959年：第16回全国都道府県選抜競輪（立川競輪場）
1960年：第17回全国都道府県選抜競輪（一宮競輪場）
* 年間賞金女王：1952年、1955年、1957年、1958年、1959年


田中和子は、その圧倒的な強さと数々の記録で、昭和期の女子競輪界に燦然と輝く足跡を残しました。

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