田中英二

田中英二：日本のアニメーション史に名を刻んだ巨匠

田中英二(1936年5月10日-1982年)は、日本の漫画家、アニメーター、そしてキャラクターデザイナーとして、日本のアニメーション業界に多大な貢献を果たした人物です。その生涯と作品群は、日本のアニメーション史において重要な位置を占めています。

手塚治虫のアシスタントから貸本漫画家へ

田中英二は、漫画界の巨匠である手塚治虫の下でアシスタントとしてキャリアをスタートさせました。この経験は、後の彼の作品に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。その後、星城朗二、星城夢二というペンネームで貸本漫画家として活躍し、数々の作品を発表しました。貸本漫画の世界で培われた経験は、アニメーターとしての彼の基礎を築いたと考えられます。代表的な作品としては『花嫁姉妹』、『エミちゃんの日記から』、『雪の降る街で』などがあります。これらの作品は、当時の社会情勢や人々の生活を反映したものであり、現在の視点からも高い価値を持つものとなっています。

アニメーション界への転身とタマ・プロダクションの設立

1960年代に入ると、田中英二はアニメーション業界へと進出します。日本における最初の本格的な30分枠の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』の制作に作画、原画として参加し、その高い技術力を示しました。そして、1965年には、自身の会社であるタマ・プロダクションを設立しました。

当初は、虫プロダクションや竜の子プロダクションといった大手のアニメーション制作会社からの下請けとして作画作業を請け負うことが中心でしたが、1970年代に入ると仕上げスタッフを立ち上げ、自社での仕上げ業務を行う体制を構築します。さらに、1980年代に入ると撮影、制作スタッフの拡充を進め、最終的にはグロス請け（アニメーション制作の一括請負）を請け負えるまでに成長しました。これは、田中英二の優れた経営手腕と、アニメーション業界における高い評価を示すものと言えるでしょう。

代表作とキャラクターデザイン

田中英二は、数々のアニメーション作品に携わりましたが、特に『アストロガンガー』、『チャージマン研!』、『ドン・チャック物語』、『星の王子さま プチ・プランス』といった作品におけるキャラクターデザインは高く評価されています。特に『チャージマン研!』は、2000年代半ば以降、再評価の波に乗り、その独特なキャラクターデザインとストーリー展開が再び注目を集めました。これらの作品において、田中英二は、独特の世界観を創造し、視聴者に強い印象を与えました。

田中英二が関わった主な作品としては、『鉄腕アトム』（作画、原画）、『紅三四郎』（チーフアニメーター）、『魔法のマコちゃん』（作画監督）、『原始少年リュウ』（作画監督）、『アストロガンガー』（キャラクターデザイン、作画監督）、『チャージマン研!』（原作、キャラクターデザイン、作画監督、原動画）、『ダメおやじ』（原画）、『ドン・チャック物語シリーズ』（キャラクターデザイン、作画監督）、『タイムボカン』（作画監督）、『グロイザーX』（作画監督）、『ヤッターマン』（作画監督）、『とびだせ!マシーン飛竜』（作画監督）、『星の王子さま プチ・プランス』（キャラクターデザイン）などがあります。

家族とその後

田中英二の弟には、タマ・プロダクション社長を継いだ田中道哉、アニメーターの西城隆詞がいます。また、2000年代から2010年代にかけて活躍した歌手・アイドルの萩原舞は、田中英二の大姪にあたります。

田中英二は、病魔と闘いながらも、アニメーション制作の現場において精力的に活動し、後進の育成にも力を注ぎました。1982年、45歳の若さでこの世を去りましたが、彼の功績は現在も日本のアニメーション業界に大きな影響を与え続けています。彼の作品群は、後世に残るべき貴重な文化遺産と言えるでしょう。

参考文献

リスト制作委員会『アニメージュ アニメポケットデータ2000』徳間書店、2000年7月
アニメージュ編集部『TVアニメ25年史』徳間書店、1988年12月
岡田斗司夫、眠田直、唐沢俊一「狂気の低予算アニメ チャージマン研」『オタクアミーゴスの逆襲』楽工社、2009年5月
西野聖市、大川正義、高橋幸司 著、安部理一郎、大野篤志 編『チャージマン研! Tribute to Soundtracks vol.1』トラフィック・エンタテインメント、2010年10月27日
『THIS IS ANIMATION すばらしきアニメ世界シリーズ 1 SF・ロボット・アクションアニメ編』小学館、1982年4月10日
その他多数の書籍、雑誌記事

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