田名

神奈川県相模原市田名：歴史と文化、そして現代産業の調和

田名は、神奈川県相模原市中央区と緑区にまたがる地域です。相模川左岸に広がる相模原台地の段丘上に位置し、その歴史は古く、古代から続く集落が形成されてきました。本記事では、田名の歴史、地理、産業、そして交通網などについて詳細に解説します。

古代から近世までの歴史：相模川の恵みと時代の変遷

田名周辺には、後期旧石器時代末の遺跡である田名向原遺跡が存在し、古くから人々が居住していたことが示唆されています。古代には相模国高座郡に属し、『和名類聚抄』にも記載のある塩田郷が現在の田名塩田周辺に比定されています。江戸時代には高座郡田名村として知られ、下野烏山藩の飛び地領となるという、相模原地域では珍しい事例が見られます。この時代には、相模川を利用した農業や、養蚕が盛んに行われていました。1858年（安政5年）には、烏山用水が建設されましたが、翌年の洪水で被害を受け、地元の有力農民である江成久兵衛がその復旧に尽力しました。

明治維新以降：町村制施行と相模原市への合併

明治維新後の廃藩置県、府県再編を経て、1889年（明治22年）には町村制施行により高座郡田名村となりました。その後、1941年（昭和16年）に上溝町などとの合併により相模原町の一部となり、さらに1954年（昭和29年）には相模原市に編入されました。2010年（平成22年）の政令指定都市移行によって、田名の大部分は中央区に、一部は緑区に属することとなりました。

地理：相模川と段丘崖が織りなす多様な地形

田名は、相模川左岸に広がる相模原台地の中段と下段に位置し、相模川沿いの氾濫原も含まれています。最も広い面積を占めるのは田名原面（中段）で、陽原面（下段）は西部の相模川沿いに細長く分布しています。八瀬川や鳩川などの河川も流れ、それぞれの段丘上には集落が形成されてきました。しかし、地下水位が低いため、古くからの集落は水を得やすい場所に立地しています。段丘面の大部分は畑地として利用され、明治から昭和初期にかけては養蚕が盛んでした。

産業：工業団地の集積と新たな産業の進出

鉄道駅から離れていたことや、国道129号バイパス建設によるトラック輸送の便の良さから、1960年代以降、田名には多くの工場が進出しました。三菱重工業やキャタピラージャパンなどを核とする田名工業団地、清水原工業団地、赤坂工業団地は、市内を代表する工業地区となっています。近年では、南部の塩田地区にテクノパイル田名工業団地が造成され、中小の先端技術産業の誘致が進められています。

交通：バス路線の充実と田名バスターミナルの開設

鉄道は通っていませんが、バス路線は充実しており、神奈川中央交通バスが橋本駅、相模原駅、淵野辺駅などへの路線を運行しています。2014年（平成26年）には田名バスターミナルが開設され、路線の再編が行われました。相模原納涼花火大会の開催時には、多くのバス路線が田名バスターミナルで折り返し運行となります。

教育、文化、その他

田名には、小学校、中学校、高等学校があり、教育施設も充実しています。また、相模田名民家資料館などの文化施設や、神社仏閣も存在します。

田名塩田と水郷田名

田名地区内には、住居表示によって分離された田名塩田と水郷田名があります。田名塩田は工業団地と住宅団地が混在しており、水郷田名は、古くから行楽地として親しまれてきた久所地区を中心とした地域です。

まとめ

相模原市の発展に大きく貢献してきた田名は、歴史と自然、そして現代産業が調和する地域です。古くからの集落の風景と近代的な工業団地が共存する独特の景観は、田名の魅力の一つと言えるでしょう。今後も、地域住民の努力によって、さらなる発展が期待されます。

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