田町 (八王子市)

田町（たまち）

田町は、東京都八王子市の東部に位置する町名で、住居表示が実施されています。かつては八王子遊廓として知られ、独特の歴史を持つ地域です。現在の田町は、住宅地として静かな佇まいを見せていますが、その歴史を紐解くと興味深い事実が浮かび上がってきます。

地理

田町は、八王子市街地の中心部からやや北側に位置し、浅川の南岸に広がっています。北側は浅川の河川敷に接しており、東、南、西の三方は元横山町に囲まれています。町域はほぼ平坦で、かつて遊廓の中央を東西に走っていた大通りの名残で、道幅が比較的広い箇所があります。大門は町域の東側に設けられていました。

歴史

江戸時代から戦前

江戸時代、八王子宿には多くの宿場がありましたが、飯盛女を置くことが許されたのはごく一部でした。しかし、実際には多くの旅籠で同様の営業が行われていたと言われています。宝暦年間には、その数は30軒近くに達したとされ、これらの宿が八王子遊廓の前身となりました。

1893年、大火によって遊郭が焼失した後、甲州街道沿いに点在していた貸座敷が、元横山町の妙薬寺裏の田地に移転したのが八王子遊廓の始まりです。1897年に正式に指定され、東側には大門が設けられ、周囲には堀を模した側溝が巡らされました。この地域は、当時「田町」、「浦田」、「新地」などと呼ばれていましたが、1912年に正式に「田町」という町名となりました。1917年には、八王子市の市制施行に伴い、八王子市の町名となっています。

当時の遊廓は、大門から入った中央の大路を挟んで両側に妓楼が立ち並んでおり、桜や柳の並木が美しかったとされています。また、大和楼の裏には性病検査を行うための病院も設置されていました。田町は衛生設備が整っていたため、梅毒などの性病で入院する患者は、田町の遊女よりも中町の芸者が多かったと言われています。確認されている妓楼には、大黒楼、道米楼、但州楼、角勢楼、大桝楼、武蔵楼、尾張楼、栄太楼、大川楼、亀万楼、紅葉楼、但清楼、楓楼、福万楼、桝万楼、弥生楼、藤本楼、大万楼、今万楼、大和楼、西玉楼、宏陽楼、三崎楼、吉濱楼、いろは楼、徳万楼などがありました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、八王子空襲の被害を免れた田町遊廓は、アメリカ兵に独占される状態となりました。しかし、若い衆の多くは徴兵で失われ、女性たちも慰安婦にされたり、食糧事情から帰郷したりしており、ほぼ機能を失っていました。その後、アメリカ軍による「オフリミット」を経て、日本人によって利用されるようになりました。しかし、1958年4月1日の売春防止法施行により、八王子遊廓は廃止されました。遊廓廃止後、田町は宅地化が進み、当時の建築物が残る部分はごくわずかとなっています。

1970年には、元横山町との境界が一部変更され、現在の町域となりました。

地名の由来

田町という地名は、八王子遊廓が置かれた際に呼ばれていた通称の一つに由来します。遊廓が移る前は田地であったことから、この名が付けられました。

沿革

1893年：八王子大横町の「新万楼」から出火、大火が発生。遊廓を元横山町に移転することが決定。
1894年：元横山町妙薬寺裏に八王子遊廓が指定。
1897年：八王子大火が発生。貸座敷が指定地に移転。
1912年：八王子遊廓とその周辺地域が元横山町から分離し、田町として正式に町名となる。
1917年：八王子市の市制施行に伴い、八王子市の町名となる。
1958年：売春防止法施行により、八王子遊廓が廃止。
1970年：住居表示実施。元横山町の一部を編入し、町域を整理。

史跡

福田荘：現存する数少ない妓楼建築。

その他

最寄りの駅はJR八王子駅。
町域内に鉄道は通っていない。

田町は、その歴史的な背景から、八王子の発展を語る上で欠かせない地域の一つです。遊廓としての賑わいは過去のものとなりましたが、その歴史は今もなお語り継がれています。

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