平賀朝雅

平賀朝雅 (ひらが ともまさ)

平賀朝雅は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけての鎌倉幕府の御家人です。新羅三郎義光を祖とする源氏の一門で、源頼朝に重用された平賀義信の四男として生まれました。母は頼朝の乳母である比企尼の三女、妻は北条時政と牧の方の娘という、当時としては非常に有力な家柄の出身でした。別名は朝政とも呼ばれます。

生涯

『愚管抄』によると、朝雅は源頼朝の猶子であったとされ、『吉見系図』には頼朝から「朝」の字を与えられたと記されています。武蔵守には、父・義信、兄・大内惟義の後を継いで任命されていますが、正確な時期は不明です。

建仁2年（1202年）に母が死去すると、翌建仁3年（1203年）の比企能員の変では、比企氏と北条氏という二つの有力な氏族と縁戚関係にあった朝雅は、北条氏側として比企氏討伐軍に加わります。源頼家が追放され、源実朝が三代将軍として擁立された直後には、政変による幕府の混乱に乗じた謀反を防ぐため、京都守護として都に派遣されました。

同年12月、幕府の政変に乗じて伊勢国と伊賀国で平家残党による反乱（三日平氏の乱）が起こると、守護の山内首藤経俊が逃亡。朝雅は鎮圧を命じられ、元久元年（1204年）4月に鎮圧に成功します。その功績により伊賀・伊勢の守護職に任じられ、『明月記』によると、鎮圧の便宜を図るため後鳥羽上皇から伊賀国の知行国主に任じられるという、御家人としては異例の厚遇を受けました。その後、院の殿上人となり、後鳥羽上皇に重用されています。

建仁3年（1204年）11月には、源実朝の正室を迎えるため、朝廷や公家との交渉役を務めます。その際、正室を迎えるために上洛していた武蔵国の御家人・畠山重保と口論となります。この時は周囲の取りなしで事態は収まりましたが、翌元久2年（1205年）6月、この口論が発端となり畠山重忠の乱が勃発。畠山重忠・重保父子は謀反の疑いで討伐されました。『吾妻鏡』によれば、朝雅が重保との争いを妻の母である牧の方に訴え、牧の方が夫の北条時政に畠山親子に謀反の疑いがあると讒言したことが原因であるとされています。畠山氏は武蔵の最有力御家人であり、武蔵国司であった朝雅とは関係が深く、朝雅の舅で幕府の実権を握っていた北条時政は、朝雅の後見人として朝雅の上洛後に武蔵国の行政権を掌握しており、武蔵武士団の棟梁である畠山重忠とは対立関係にありました。

時政は畠山父子を排除するために謀反人に仕立て上げたとされ、時政に畠山討伐を命じられた息子の北条義時・時房は反対しましたが押し切られました。この事件をきっかけに、時政と義時・政子の対立が決定的になったと『吾妻鏡』は記しています。これは、時政が先妻の子である義時と、後妻の娘婿である朝雅を担いだ北条家内の対立と、鎌倉に隣接する有力国である武蔵の支配を巡る畠山氏と北条氏の軋轢が背景にあったと考えられます。

元久2年（1205年）7月、源実朝を廃して朝雅を新たな鎌倉殿として擁立しようとした時政が失脚（牧氏事件）。当時、京都守護を兼ねていた朝雅は、閏7月26日に京都で、幕府の実権を握った北条政子・義時の命を受けた在京御家人によって討たれました。『明月記』によると、朝雅は討たれる前夜に院御所の警護を務めていた際に従者と密談しており、その時に追討のことを知ったのではないかと藤原定家は記しています。『吾妻鏡』によると、当日に朝雅は後鳥羽上皇の仙洞で囲碁会に参加していた時に討手が来ていることを伝えられましたが、動じることなく囲碁を打ち終えてから上皇に暇乞いをしたとされています。

『明月記』『愚管抄』によれば、幕府は実朝の名で在京御家人に朝雅討伐を命じ、後鳥羽上皇にも奏上しました。六角東洞院（現在の中京区）にあった朝雅の邸宅は武士に取り囲まれ、しばらく合戦となりましたが、邸宅に火が放たれたため朝雅は落ち延びます。山科（現在の山科区）まで逃げ延びましたが、追っ手に追いつかれ自害しました。伯耆国の守護である金持という武士が朝雅の首を取り、後鳥羽上皇が検分したと伝えられています。北酒出本『源氏系図』によれば、享年は24歳でした。

系図

父：平賀義信
母：比企尼の三女
妻：北条時政と牧の方の娘

関連作品

草燃える（1979年、NHK大河ドラマ、演：伊東平山）
鎌倉殿の13人（2022年、NHK大河ドラマ、演：山中崇）

関連項目

平賀氏
* 牧氏事件

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