疋

疋（ひき/ひつ/き・匹）について

「疋」という言葉は、一見すると単純な単位のように思えますが、その歴史を紐解くと、実に多様な意味と用法を持っていたことがわかります。現代では動物を数える際に「匹」を使うことが一般的ですが、かつては「疋」も同様に用いられていました。この「疋」という言葉が持つ、布の単位、お金の単位、そして動物を数える単位としての側面を、詳しく見ていきましょう。

布の単位としての「疋」

「疋」は、もともと布の単位として使われていました。具体的には、布帛2反（端）分を指す単位であり、古代中国にその起源を持ちます。古代中国では、長さの単位である「両」（約40尺）が転じて「疋」という単位が生まれました。当時の1疋は、約9.4メートルに相当したとされています。

貨幣の単位としての「疋」

「疋」は、貨幣の単位としても使われました。鎌倉時代から江戸時代にかけて、銭貨の数え方として用いられ、100疋で1貫とされていました。この場合、1疋は10銭（文）に相当しますが、「疋」と「銭（文）」を併用する習慣はなかったとされています。興味深いのは、初期には1疋に換算される銭貨の数が一定ではなかったという点です。『徒然草』には1疋が30文とされている記述も見られます。また、1疋が10銭とされた理由として、犬追物に使われる犬1匹の値段が10銭だったという伝説も残っています。

金貨の単位としての「疋」

銭貨の数え方とは別に、金貨の数え方としても「疋」が使われました。この場合、金1分が100疋とされました。この用法は、戦前頃まで皇室関係の寄付の記録などで見られ、円貨に換算すると1疋は2厘5毛に相当しました。このように、「疋」は時代や文脈によって異なる価値を持つ単位として使われていたことがわかります。

助数詞としての「疋」と「匹」

現代では、「匹」は動物を数える助数詞として一般的ですが、古くは「疋」も同様に使われていました。現在では「匹」が主流となっていますが、歴史的には「疋」と「匹」が混在して用いられていたことがわかります。現代ではあまり意識されませんが、これらの言葉は長い歴史の中で変化してきたということを覚えておくと良いでしょう。

まとめ

「疋」は、布の単位から始まり、貨幣の単位、そして動物を数える単位へと、時代とともにその意味合いを変化させてきました。その多様な用法は、日本の歴史や文化を深く理解する上で重要な要素と言えるでしょう。現代では「匹」が一般的ですが、古文書などを読む際には、「疋」が持つこれらの多面的な意味を考慮する必要があります。このように、「疋」という言葉は、歴史の奥深さを感じさせてくれる言葉の一つと言えるでしょう。

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