目ハズシ

目ハズシ（もくはずし）とは

囲碁における目ハズシとは、碁盤の隅から数えて3線と5線が交わる地点（3,5）または（5,3）の場所を指します。この位置は、布石の初期段階において隅の着点として選ばれることが多く、戦略的に重要な意味を持ちます。

図で示すと、黒1の位置が目ハズシです。一つの隅には目ハズシに該当する箇所が2つ存在し、盤上の他の石の配置によってその意味合いが変化します。

特徴

目ハズシは三線と五線の交点という位置から、打ち手の意図や相手の出方に応じて、実利を重視することも、勢力を重視することも可能です。また、大斜定石のような複雑な変化を内包しており、変幻自在な打ち方ができるため、上級者向けの着点と言えるでしょう。辺に近いため、相手の勢力を牽制する目的で打たれることも多く、戦略的な意味合いが強いです。

目ハズシの活用方法

小目と同様に、目ハズシも一手で隅を完全に確保できるわけではありません。対角線上の位置にもう一手打つことで隅を完全に確保する「シマリ」が重要になります。同時に、相手からすれば、そのシマリを邪魔する「カカリ」も重要な一手となります。

シマリ

小ゲイマジマリ

目ハズシからのシマリで最も一般的なのは、aへのシマリです。これは、小目からの小ゲイマジマリと同形になります。

高ジマリ

勢力を重視する場合は、黒1やa、bなどに高いシマリを打つこともあります。ただし、cなどに打ち込みの隙が残るため、特殊な場合に用いられることが多いです。

トーチカ

1から3にシマる形は「トーチカ」と呼ばれ、隅を大きく確保できるだけでなく、左辺や下辺に強い勢力を及ぼすことができます。この形は1935年の小野田千代太郎-橋本宇太郎戦で現れ、長谷川章が好んで使用しました。しかし、近年では一隅に3手かけるのは非効率とみなされ、あまり打たれることはありません。黒3ではaのように広くシマることもあります。

カカリ

小目カカリ

白がカカる際、最も一般的なのは1の小目へのカカリです。これに対し、黒はaで圧迫して勢力を築いたり、bの大ゲイマガケで難戦を挑んだり、c～fのように左辺から挟んで打ったり、g方面にヒラくなど様々な対応が考えられます。特に、bの大ゲイマガケは変化が非常に多く、「大斜千変」とも呼ばれる難解な定石です。

高ガカリ

白1のように高くカカり、隅の実利を譲って打つこともあります。黒はaに受けて隅の実利を確保することが多く、これで不満はありません。他に、bにツケて下辺に勢力を張るという打ち方もあります。

その他のカカリ

aの三々は、根拠と実利を早めに確保する意図で、周辺に黒石があって戦いを避けたい時などに有効です。bのカカリは呉清源が推奨しており、簡明に局面を分けられるのが特徴です。cは勢力を志向した特殊なカカリです。

代表的な目ハズシ定石

小目カカリの定石

白が小目にカカってきた場合の代表的な定石です。黒1から圧迫して外勢を築きます。

黒1と大斜にカケると、そこから無数の定石が発生します。基本的な応酬を途中まで示すと、以下のようになります。詳細については「大斜定石」を参照してください。

高ガカリの定石

白が高ガカリしてきた場合の代表的な定石です。黒は1と隅の実利を確保し、白は左辺にヒラいて一段落します。

目ハズシの戦略

目ハズシは、他の隅との関連性を考慮して、戦略的に打たれることが多いやや特殊な打ち方です。

例えば、左辺のケースでは、黒1と目ハズシに打つことがあります。もし白2がカカってきた場合、黒はまず3からカケ、左上隅でも7から圧迫することで、白を低位に押し込めることができます。白は2の手で3に高ガカリするなど工夫せざるを得なくなり、部分的に最も得である小ゲイマガカリを遠慮させていることになります。

右辺では、黒1の目ハズシに対して、白2がカカってきた場合、黒3がヒラキとハサミを兼ねた好点となります。すると、白はaなどにカカる手段を選ぶことになり、相手の戦略の幅を狭めていると言えるでしょう。

目ハズシを得意とする棋士

石田芳夫
太田雄蔵
* 関山仙太夫

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