シマリ

囲碁における「シマリ」

囲碁用語の一つである「シマリ」は、隅に既に打たれた石の周辺に新たな石を打ち、自陣の地を確保する戦略的な一手です。動詞としては「シマる」と表現されます。シマリは、単に隅の地を確保するだけでなく、その後の展開において、周辺への影響力や相手への攻撃の拠点となるため、非常に重要な意味を持ちます。そのため、序盤の早い段階で打たれることが一般的です。

シマリとカカリ

シマリを妨害する手として「カカリ」があります。カカリは、シマリと同様に重要な価値を持ち、相手の地を削る効果を持ちます。シマリは守りの一手、カカリは攻めの一手と捉えることができます。

小目からのシマリ

小目からのシマリは、様々な形があります。

小ゲイマジマリ
最もよく打たれる形で、隅の地を約10目程度、堅実に確保できます。侵入のスキもほとんどありません。
一間ジマリ
右辺への影響力が強い一方、上辺からの侵入の余地を残します。
大ゲイマジマリ
小ゲイマジマリよりも大きく地を確保できますが、やや侵入されやすい側面も持ちます。
二間ジマリ
中央への意識が強いシマリ方で、以前は特殊な打ち方とされていましたが、近年ではAIの影響もあり、プロ棋士の間でも見られるようになりました。

星からのシマリ

星からのシマリは、以下のようなものがあります。

大ゲイマ
小ゲイマ
小目からのシマリと比較して、隅の地を荒らされる余地を残しますが、中央に強い勢力を築くことができます。そのため、相手は侵入のタイミングを慎重に選ぶ必要があります。

隅の地を完全に確保するためには、上記に加え、更なる一手が必要になります。また、隅を直接守る打ち方も「シマリ」と表現されることがあります。

目ハズシからのシマリ

目ハズシからのシマリは、以下のようなものがあります。

小ゲイマジマリ
最も一般的な形で、小目からの小ゲイマジマリと同型になります。
高いシマリ
中央への影響力を重視するシマリ方で、隅への侵入の余地が残ります。
特殊なシマリ
さらに一手加えることで、隅を大きく確保できます。このシマリから、三手かけて隅を確保する形は「トーチカ」と呼ばれます。また、直接隅を確保する手もあり、「タイガージマリ」と名付けられています。

高目からのシマリ

高目からのシマリは、以下のようなものがあります。

シマリ
小目からの一間高ジマリと同型になる形が一般的です。
中央を意識したシマリ
中央への影響力を重視したシマリ方です。

三々からのシマリ

三々からのシマリは、既に隅を確保しているため、他の着点に比べて優先度は高くありません。シマる場合は、「a」「b」「c」あたりに展開することが一般的です。

シマリを省略する戦略

江戸時代までは、小目からシマリを打つのが定石でしたが、昭和に入り、呉清源や木谷實らによって、隅を一気に占拠する新しい戦略が考案されました。この戦略では、星や三々などで隅を確保し、辺を優先する「新布石」が採用されました。

また、1970年代からは「中国流」布石が登場し、シマリを省略して辺を優先し、カカリを迎え撃つ戦略が生まれました。これにより、ミニ中国流や小林流など、シマリを省略するスタイルが普及しました。近年では、シマリよりもカカリを優先して戦いに持ち込むケースが増えていますが、シマリの価値は依然として高いです。

まとめ

シマリは、囲碁において非常に重要な戦略であり、その打ち方一つでその後の展開が大きく左右されます。序盤におけるシマリの選択は、その後の戦いの方向性を決定づけると言えるでしょう。


参考図書
石田芳夫『シマリの技法―最強囲碁塾』河出書房新社

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