真澄鏡(ますみのかがみ)
概要
真澄鏡は、
諏訪大社上社に伝わる重要な神宝の一つです。伝承によれば、祭神である諏訪明神(建御名方神)が所持していたとされています。かつては、他の神宝(
八栄鈴など)とともに、上社前宮の境内にある内御玉殿に納められていました。
諏訪明神の生ける
神体とされていた上社の大祝(おおほうり)は、かつて年に2回(3月
巳の日と9月下旬の
寅または
申の日)、真澄鏡の前で
八栄鈴を鳴らし、天下泰平を祈願していました。この鏡は、決して曇ることがなく、
諏訪氏(上社大祝家)の氏人のみを映すという特別な力を持つと伝えられています。
現在、真澄鏡は第一の神宝として、上社本宮の宝殿に安置されており、一般の人が拝見することはできません。
考証
宝治3年(1249年)に書かれたとされる『諏訪信重解状』には、諏訪明神の降臨に関する神話が記されています。この神話は、瓊々杵尊(
天孫降臨)や饒速日命の天降り神話と類似している点が指摘されています。また、上社の大祝が生き神とされていたことは、
天皇を
現人神とする思想と共通する点があると考えられています。
諏訪明神が鏡・鈴・
馬具を持参して降臨したという伝承は、
古墳時代末期に横穴石室古墳文化と飼馬技術を
諏訪地域にもたらした勢力(上社の
諏訪氏と下社の金刺氏の祖先)の姿を反映しているという見解もあります。しかし、現存する上社の神宝の多くは、奈良・
平安時代のものであるとされています。
また、『信重解状』の内容や形式には不審な点が多く、
宝治年間のものではなく、後世の偽作とする説も存在します。
その他
宮坂醸造の日本酒「真澄」の銘柄は、この真澄鏡に由来しています。このことからも、真澄鏡が地域において重要な存在であったことが伺えます。
脚注
出典
参考文献
諏訪市史編纂委員会 編『諏訪市史 上巻 (原始・古代・中世)』諏訪市、1995年。
福田晃 編『諏訪信仰の中世―神話・伝承・歴史』二本松康宏、徳田和夫、三弥井書店、2015年。
ISBN 978-4-838-23288-8。
細田貴助『県宝守矢文書を読む―中世の史実と歴史が見える』ほおずき書籍、2003年。ISBN 978-4-434-03552-4。
関連項目
建御名方神
諏訪大社
銅鏡
レガリア
三種の神器