眩人

『眩人』の概要と内容

概要

松本清張による『眩人』は、歴史小説として唐の都・長安や奈良時代の日本宮廷を舞台にしている。本作は、仏教僧・玄昉の視点から物語が語られ、著者の独自な視点による幻想的な描写と、当時の権力闘争が巧みに織り交ぜられている。1977年から1980年にかけて『中央公論』に連載され、1980年11月に刊行された。特に、「眩人」または「幻人」とは、著者の言葉を借りれば、魔法使いのような存在であり、西方出身の麻薬を用いる術師を指している。

あらすじ

物語は日本に帰国を考えている玄昉が描かれます。彼は唐の地で数年を過ごし、その間に堕落した生活を送る日本僧・惟安との関係をこしらえます。惟安を通じて、西域の商人・康忠恕と出会い、彼に日本の薬草に関する知識を提供することに興味を持たれます。康忠恕の誘いで、玄昉は地下の祠で供される不思議な液体を飲む行為に及び、そこから驚くべき幻想と淫猥な夢を見ることになります。

異国への思いを胸に、玄昉は帰国することを決意します。帰国後、彼は西域出身の少年・康許生を連れて行き、唐で培った知識と幻術を駆使して、朝廷での権力拡大を狙います。彼の行動は、より大きな権力を得るための戦略的な一手となります。

登場人物

• - 玄昉: 本作の主人公であり、遣唐使の学問僧。長安では遊びに耽りつつ、帰国後に自らの利益を追求する。
• - 李密翳: 歴史書「続日本紀」に名が登場するが、作中では西域人、康許生が改名した存在として描かれる。玄昉を尊敬し、彼を師と仰合わせる。
• - 吉備真備: 「下道」真備と呼ばれ、特に権力の流れを読み取る能力に長ける。玄昉と力を合わせる。
• - 藤原宮子: 聖武天皇の母として描かれ、産後に心的な障害を抱えるも、特異な方法により癒される。
• - 聖武天皇: 幼少期から大事に育てられた王子であり、政治的な活動に熱心に取り組む。
• - 光明皇后: 聖武天皇を陰で動かす重要な存在であり、彼の行動に影響を与える。

脚注・出典

本作では、ゾロアスター教やペルシア人に関する著者の推論が展開されており、それに関しては他の著作にも言及が見られる。

• - 『火の路』: 小説の形式を取るも、独立した研究ノートが含まれ、著者の考察が示されている。
• - 『ペルセポリスから飛鳥へ』: イランに関する調査記録で、ゾロアスター教の儀式について触れられている。
• - 『清張通史6』: 古代史の通史シリーズであり、本作と関連するテーマが扱われている。

このように、松本清張の『眩人』は、幻想的な体験を通して歴史的な背景と権力争いを描いた一大叙事詩となっています。

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