矢不来信号場

矢不来信号場（やふらいしんごうじょう）

矢不来信号場は、北海道北斗市館野に設置されている、道南いさりび鉄道線の信号場です。この信号場は、上磯駅と茂辺地駅の間に位置しており、具体的には茂辺地駅からおよそ3.3kmの地点に設けられています。

沿革

この信号場は、比較的新しい施設です。開設は1990年（平成2年）6月4日。当時、この区間は北海道旅客鉄道（JR北海道）の江差線の一部であり、特に青函トンネル開業に伴い、津軽海峡線として列車の運行本数が増加していました。矢不来信号場は、こうした列車増加に対応するため、列車交換や追い越しが可能な地点を増やす目的で設置されました。

その後、2016年（平成28年）3月26日に北海道新幹線の新青森駅 - 新函館北斗駅間が開業したことに伴い、江差線のうち五稜郭駅から木古内駅までの区間は、JR北海道から経営が分離されることとなりました。この区間を引き継いだのが第三セクター方式で設立された道南いさりび鉄道であり、矢不来信号場もこの移管によって道南いさりび鉄道の施設となりました。

名称の由来

信号場名である「矢不来」は、信号場の南側に隣接する同名の地区名に由来しています。この「矢不来」という地名の起源には諸説ありますが、有力な説として、アイヌ語の「ヤンケナイ」が挙げられます。これは「陸に揚げる川」、すなわち「陸揚げ場」を意味する言葉とされています。この「ヤンケナイ」に、かつてこの地に移住してきた人々が用いた東北地方の方言で「矢が来（け）ない」という言葉が当てられ、漢字で「矢不来」と表記されるようになったと伝えられています。その後、この表記が一般化し、音読みされるようになったと考えられています。

構造

矢不来信号場は、主に列車交換の目的で使用されるため、線路は2本が設けられています。これらの線路は、どちらも交流20,000V・50Hzで電化されています。線路の配置は「一線スルー方式」が採用されており、これは、一方の線路を本線として通過列車が高速で通過できる構造を指します。待避線として機能する線路の一部は、すぐ近くにある第一矢不来トンネルおよび第二矢不来トンネルの内部を通っています。

通常、この信号場で列車交換や追い抜きが行われない場合、上下線ともに海側に設けられた岩石覆いの下を通過します。一方、対向列車との交換や、後続の列車に追い抜かれるために停車する必要がある場合は、トンネル側の線路へ進行し、指定された位置で待機を行います。このように、列車運行状況に応じて線路の使い分けが行われています。

周辺環境

信号場の周辺には、主要な道路として国道228号線が通っています。また、付近には函館バスの「矢不来」停留所が設置されており、公共交通機関でのアクセスも可能です。

隣接駅

道南いさりび鉄道線の隣接駅は以下の通りです。

茂辺地駅 (sh06) - 矢不来信号場 - 上磯駅 (sh07)

関連項目

日本の信号場一覧
* 津軽海峡線

この信号場は、かつての津軽海峡線の一部として、本州と北海道を結ぶ重要な役割を担っていた区間に位置しており、現在も道南地域のローカル輸送を支える道南いさりび鉄道線の重要な施設の一つとなっています。

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