石川氏 (伊予国)

石川氏：伊予と備中で活躍した武家の興亡

石川氏は、伊予国（現在の愛媛県）新居郡・宇摩郡と備中国（現在の岡山県西部）を舞台に活躍した武家です。そのルーツは河内源氏に遡るとされ、家紋には飛び鶴を用いていました。南北朝時代から戦国時代にかけて、細川氏の被官として、また四国の有力武家として歴史に名を刻みました。

前史：河内源氏から伊予・備中へ

石川氏の正確な系図は伝わっていませんが、河内源氏の流れを汲み、源義家の子である源義時の末裔であると考えられています。最も古い記録では、「石川入道」という人物が康応元年（1389年）に細川満之から伊予保国寺領に関する指示を受けており、この頃から細川氏との関係が始まっていたことが伺えます。石川氏は、細川氏の守護代として、伊予国新居郡で勢力を伸ばしました。

その後、「石河入道浄志」が応永4年（1396年）には、細川氏が守護を務める讃岐国長尾荘の年貢を請け負っており、石川氏が細川氏の守護代として活動していたことが分かります。さらに、石川氏は備中国にも進出し、細川氏の備中守護獲得と同時期に、同地で守護代として庄氏とともに国内統治にあたりました。応永6年（1399年）には、備中国薗東荘の管理を任されています。

また、石川氏は和泉守護・細川満久の配下にも入っており、石川四郎左衛門入道がその命令を受けていました。備中では、吉備津神社の社務代を務め、本殿の造営にも関与しました。石川氏は、各地で細川氏の代官として活躍し、その勢力を拡大していきました。

伊予石川氏の勃興

『澄水記』や『天正陣実録』によると、大永2年（1522年）頃、備中国幸山城主の石川左衛門尉の子である石川虎之助が、伊予国新居郡の高峠城に移り住み、新居郡・宇摩郡の領主となり、石川伊予守と名乗ったとされています。しかし、この記録には不明な点も多く、同時代の史料には虎之助の名は見当たらず、石川左衛門尉が天文11年（1542年）に病没したという記録が残っているのみです。

享禄年間（1528年～1532年）には、石川氏と剣山城の黒川氏との間に合戦があったとされ、石川六郎が率いた石川勢は、黒川氏との激しい戦いを繰り広げました。天文7年（1538年）には、備中国から迎えられた石川伊予守の家臣、石川源太夫が確認できます。

伊予国では、天文20年（1551年）に石川備中守通昌が高峠城主として現れます。通昌は、備中石川氏の石川家久、または石川通経の子とも言われています。また、元亀年間以降の文書には石川備中守勝重の名が見え、通昌の子とする説があります。

石川備中守通清は、高峠城を拠点に勢力を拡大し、弘治年間には三好氏の娘を娶り、三好氏との関係を深めました。元亀3年（1572年）には、三好長慶の伊予侵攻の案内役を務めました。三好氏が伊予から撤退した後、河野氏の侵攻を受けて降伏しましたが、天正10年（1582年）には長宗我部元親に攻められ、降伏しました。通清は天正12年（1584年）に病没し、保国寺に墓があると言われています。

天正の陣と石川氏の終焉

天正13年（1585年）の豊臣秀吉による四国平定の際、当時の石川氏の当主は、7歳の石川虎竹でした。虎竹は、金子元宅に擁護され、土佐へと逃れました。しかし、高峠城は小早川隆景率いる毛利軍によって落城し、石川氏は伊予の地を失いました。

その後、虎竹は土佐で山内氏の配下となったという説もありますが、詳細は不明です。石川通清の娘たちは、金子元宅や松木新之、宇高佐馬之佐などに嫁ぎました。また、敗戦の混乱の中で河端甚左衛門によって奪い取られた娘もいたと伝えられています。

石川氏の歴史：『澄水記』より

『澄水記』によると、石川氏は大永2年（1522年）に備中国で細川氏との戦いに勝利し、勢力を拡大しました。石川左衛門尉の子・虎之助が伊予に移り、高峠城を築き、新居郡と宇摩郡を領有しました。石川氏の家臣には、石川源大夫をはじめ、金子氏、藤田氏、松木氏、近藤氏、徳永氏、塩出氏などがおり、これらの人々が石川氏を支えました。

享禄年間には、黒川氏との間で激しい合戦が繰り広げられ、一時は周布郡にまで勢力を拡大しました。しかし、黒川氏の反撃に遭い、高峠城まで撤退しました。

石川源大夫は、智慮深い人物で、郡中の問題を解決するのに尽力しましたが、主家を蔑ろにしたとして、天文年間の末期に殺害されました。源大夫の死後、高尾城には高橋美濃守大宅政輝が入り、石川氏の要害を守りました。

天文元年（1532年）には、石川伊予守の内室が出産し、虎千代と名付けられました。虎千代は成長し、備中守通清を名乗るようになりました。通清は、阿波国の三好氏の女を妻に迎え、三好氏との関係を深めました。

天正12年（1584年）に、通清は病死し、保国寺に葬られました。天正13年の四国平定の際には、幼い石川虎竹が土佐に逃れ、石川氏は伊予を失うこととなりました。

石川氏は、伊予国と備中国で大きな足跡を残した武家であり、その興亡は戦国時代の歴史を語る上で重要な要素となっています。

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