石母田達

石母田 達（いしもだ たつ）

石母田 達（1924年5月11日生まれ、2022年2月12日没）は、激動の時代を生き抜いた日本の政治家、そして労働運動家です。宮城県石巻市に生まれた彼は、同市で市長を務めた石母田正輔氏の五男にあたります。兄には、戦後の歴史学界において「国民的歴史学運動」を提唱したことで知られる歴史学者の石母田正氏がいます。

高等教育機関として東京高等工芸学校（現在の千葉大学工学部）に学び、卒業後は池貝鉄工所に入社しました。しかし、第二次世界大戦の渦中に徴兵され、陸軍技術将校として相模原市の相模補給廠に配属されます。ここでは、当時の軍事技術の粋を集めた誘導爆弾や、多くの若者の命を散らすことになった特攻兵器の開発・製造に携わりました。彼自身も特攻隊員となるべく訓練を受け、いつ来るか分からない出撃命令を待つという、死と隣り合わせの日々を過ごしましたが、幸運にも終戦を迎えることができました。

戦後、軍隊から故郷に戻った石母田は、再び池貝鉄工所へと復帰し、旋盤技師として勤めながら、同時期に日本共産党に入党しました。特に、兄の石母田正氏からの影響を受け、労働組合活動に積極的に関わるようになります。彼は池貝鉄工所の労働組合長選挙に立候補し、対立候補との激しい競争の末、わずか1票差という劇的な勝利を収め、組合長の座に就きました。これは、労働運動家としての彼のキャリアにおける重要な転換点となりました。

労働組合長としての活動を経て、石母田は日本共産党の専従職員となり、党の組織活動に深く関わっていきます。日本共産党神奈川県常任委員や、さらに要職である同党横浜市委員会委員長などを歴任し、神奈川県内における党勢拡大に貢献しました。これらの地方での党活動の実績を積み重ねた後、彼は国政への挑戦を決意します。

衆議院議員選挙には複数回にわたり挑みました。第30回、第31回、第32回と、旧神奈川1区から連続して立候補しますが、いずれも当選には至らず、苦杯をなめました。しかし、諦めることなく挑戦を続け、1972年に実施された第33回衆議院議員総選挙において、四度目の立候補でついに当選を果たします。しかも、この選挙では旧神奈川1区におけるトップ当選という輝かしい結果を残しました。しかしながら、衆議院議員としての在任期間は、この1期のみに留まりました。その後の第34回、第35回、第36回衆議院議員総選挙では、選挙区が神奈川4区に変更されたものの、再び議席を得ることはできませんでした。

国政の場を離れた後も、石母田達氏は一貫して労働運動や平和運動に関わり続けたと言われています。晩年は、神奈川県厚木市内の高齢者施設で静かに暮らしていました。そして、2022年2月12日の午後8時、老衰のため97歳で波乱に満ちた生涯を閉じました。

彼の著作としては、自らの経験と思いを綴った回顧録『激動を走り抜けた八十年』が2006年1月に私家本として刊行されています。また、彼に関連する人物や組織としては、田中美智子氏や日本民主青年同盟などが挙げられます。石母田達氏の生涯は、戦中・戦後の日本の社会変革期における一労働運動家、一政治家の軌跡を示すものと言えるでしょう。

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