磯部町穴川(いそべちょうあながわ)
三重県志摩市に位置する磯部町穴川は、伊雑ノ浦の南側に奥まった場所にあります。かつては
ウナギの養殖が盛んでしたが、現在は静かな農村風景が広がっています。複雑な
地形と豊かな自然が特徴で、歴史と文化が深く根付いた地域です。
地理
穴川は、伊雑ノ浦の南奥に位置し、
山地や
台地に
谷が入り組んだ複雑な
地形をしています。この
地形は、かつての
ウナギ養殖に適した環境を提供していました。地域内には、池田川(磯部川の支流)が流れ、伊雑ノ浦へと注いでいます。北と西は磯部町迫間、東は磯部町坂崎、南は阿児町鵜方や浜島町迫子と隣接しています。
小字
穴川は11の小字に分かれています。
黒岩(くろいわ):地域の東部
座頭橋(ざとうばし)
新道(しんど)
土橋(つちはし):地域の南部
中街道(なかかいどう):池田川より北の地域
東坊(ひがしぼ)
兵七新田(へいひちしんで)
松振(まつぶり)
向井(むかい)
山ノ
谷(やまのたに)
斧峠(よきとうげ)
また、小字ではありませんが、地域の通称として浅野(地域の南部)があります。
歴史
穴川の歴史は古く、現存する最古の記録は1335年の文書に見られます。室町時代の書物には「穴河」と記され、伊雑宮の祭礼で重要な役割を果たしていたことがわかります。戦国時代には「磯部七郷」の一つとして数えられ、江戸時代には鳥羽藩に属する村として存在していました。この頃には、新田開発も行われ、農業が地域の主要産業となりました。
江戸時代には穴川村として、鳥羽藩磯部組に属していました。村高は1746年の時点で589石であり、新田開発によって農業が発展しました。小規模な漁業も行われており、ハゼやフナなどが獲られていました。
明治時代以降
明治時代に入ると磯部村の大字となり、その後の合併を経て志摩市の一部となりました。1918年からはウナギの養殖が始まり、地域経済に大きな影響を与えました。1958年には渡鹿野島への航路が開通しましたが、1985年に廃止されました。
年表
1889年(明治22年):
町村制施行により磯部村穴川となる。
1955年(昭和30年):昭和の大合併により磯部町穴川となる。
2004年(平成16年):平成の大合併により
志摩市磯部町穴川となる。
地名の由来
穴川の地名は、古代に
土器を焼く「穴師」が住んでいたことに由来するとされています。この地域では良質な
粘土が産出されました。
産業
穴川は、かつて
ウナギ養殖で栄えました。特に兵七新田では大規模な養殖が行われ、「日本最大の養鰻場」とも呼ばれた時代もありましたが、
戦後の災害により一時衰退しました。現在では穴川殖産株式会社によって養殖事業が再開されています。
農業も依然として主要な産業であり、米や野菜などが栽培されています。
穴川では古くから
ウナギ漁が行われており、
1865年頃から鰻筒、
1870年頃からは鰻筌を使った漁が始まりました。しかし、現在は行われていません。一方、
ウナギ養殖は
1918年に始まり、最盛期には年間4万貫の生産量を誇りました。
戦後、一時衰退しましたが、現在は再興されています。
文化
穴川には、独特な
隠居制がありました。長男の結婚を機に両親が家を譲り、別の
屋敷に移り住むという風習が残っていました。この風習は、志摩地方で広く行われていたとされています。
交通
鉄道
近鉄志摩線:穴川駅が地区内にあります。かつては伊雑ノ浦の海岸線を通っていましたが、1993年に線形改良により現在の場所に移転しました。
バス
穴川バス停:三重交通の路線バスが利用可能です。
道路
国道167号(鵜方磯部バイパス)
三重県道61号磯部大王線
三重県道129号磯部大王自転車道線
施設
穴川公民館
コメリ磯部店
PLANT志摩店
あじへい磯部店
伊勢志摩エバーグレイズ
伊勢志摩ユースホステル
道の駅伊勢志摩
サンアール磯部(場外馬券発売所)
有限会社竹内餅店(さわ餅)
出身者
林玄仲(はやし げんちゅう):医師、度会府・度会県役人
その他
磯部の御神田の奉仕区である。
参考文献
千葉徳爾「志摩半島における民俗の地域差とその意味―予察的報告―」『人文地理』第16巻第5号、人文地理学会、1964年、449-462頁
磯部郷土史刊行会 編『磯部郷土史』磯部郷土史刊行会、昭和38年
磯部町史編纂委員会 編『磯部町史 下巻』磯部町、平成9年
「
角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『
角川日本地名大辞典 24
三重県』
角川書店、1983年
中野順蔵『神路川 磯部小史』三光社、昭和56年
平凡社地方資料センター 編『「
三重県の地名」日本歴史地名大系24』
平凡社、1983年
山下佐美太『磯部郷土史』磯部尋常高等小学校、昭和11年
関連項目
穴川 (曖昧さ回避)
* 鳥羽磯部
漁業協同組合