秋山玉山

秋山玉山（あきやま ぎょくざん）

秋山玉山は、江戸時代中期に活躍した漢学者です。元禄15年（1702年）に生まれ、宝暦13年（1764年）に没しました。本名は定政、または儀。字は子羽、通称は半次、儀右衛門と称しました。

生涯

玉山は、熊本藩士である中山定勝の次男として、豊後国鶴崎（現在の大分県大分市）で生を受けました。母は篠田氏。後に、子のいなかった叔父・秋山需庵の養子となり、秋山姓を名乗ることとなります。

幼少の頃から学問を好み、水足屏山に師事して儒学を学びました。享保8年（1723年）には、藩主・細川宣紀に中小姓として仕え、翌年には宣紀に随行して江戸へ上ります。江戸では昌平坂学問所に入り、林鳳岡に朱子学を学びました。林鳳岡の門下で古注と新注を併用する方法を習得するとともに、徂徠学にも通じました。10年にわたる研鑽の結果、林鳳岡に代わって教鞭を執るほどの学者となりました。

享保17年（1732年）に帰藩し、学問指南役に就任。熊本で教鞭を執る玉山のもとには、多くの門人が集まりました。細川宣紀の後、宗孝、重賢にも引き続き仕え、特に重賢は玉山を重用し、相応の自由を与えました。これにより、服部南郭、服部仲英、高野蘭亭、滝鶴台、細井広沢らと交流し、詩文を交わしました。高松藩、宇土藩、日出藩などの藩主に招かれ、講釈することもあったと伝えられています。

宝暦5年（1755年）には、藩校である時習館の設立を建白し、「時習館学規」を制定しました。この学規では、徂徠学と朱子学を折衷した学風を打ち立てています。「時習館学規」は時習館創立の翌年に作られ、「十三則」と「十七則」が存在します。基本的には同じ内容ですが、体罰禁止の思想が明文化されている点が特徴です。時習館の創立時期から見て、この学規の影響は大きかったと考えられます。宝暦13年（1763年）12月11日、熊本の自宅で没しました。古屋愛日、古屋昔陽、片山兼山、千葉芸閣などが弟子として知られています。

業績

玉山の著作としては、『玉山先生詩集』『玉山先生遺稿』「時習館学規」などが挙げられます。詩人としては古文辞派に属し、五言絶句を得意としました。林大学の下で長年学問を学びましたが、その学識、思想は偏りがなく、包容的であったと評されています。

大正5年（1916年）には、その功績が認められ、正五位を追贈されました。

人物

秋山玉山は、学問に対する真摯な姿勢と、幅広い知識、そして柔軟な思考を持った人物でした。彼の学問は、朱子学に偏ることなく、徂徠学の要素も取り入れ、独自の学風を確立しました。また、教育者としても優れており、多くの優秀な人材を育成しました。彼の思想は、時習館の教育理念として受け継がれ、後世に大きな影響を与えました。

参考文献

『江戸文人辞典　国学者・漢学者・洋学者』（東京堂出版、1996年）
江森一郎 新装版『体罰の社会史』新曜社、2013年（初版は1989年）
* 『江戸詩人選集第二巻　梁田蛻巌、秋山玉山』徳田武訳注、岩波書店、1992年（再版2002年）

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