程秉

程秉（ていへい、生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の呉に仕えた人物で、学者・政治家として知られています。字は徳枢（とくすう）といい、豫州汝南郡南頓県（現在の河南省周口市項城市）の出身です。

若い頃は鄭玄（じょうげん）に師事し学問を修めましたが、戦乱を避けて交州（こうしゅう）の士燮（ししょう）のもとに身を寄せました。交阯（こうし）には劉熙（りゅうき）という学者がおり、程秉は彼のもとでさらに学識を深め、五経に通じるほどの知識を得るに至りました。その後、士燮から長史（ちょうさ）に任じられ、その才能を発揮しました。

呉の孫権（そんけん）は、程秉が学者として名声を得ていることを聞き、彼を招聘して幕僚に加えました。孫権は程秉の学識を高く評価し、太子の孫登（そんとう）の教育係である太子太傅（たいしだいふ）に任じました。黄武4年（225年）には、孫登の婚礼の際に太常（たいじょう）となり、孫登の妃（周妃）を迎える重要な役割を果たしました。孫権と孫登は程秉を丁重に遇し、その功績を称えました。

程秉は病気のため、官職にあるまま亡くなったと伝えられています。彼は『周易摘（しゅうえきせき）』・『尚書駮（しょうしょはく）』・『論語弼（ろんごひつ）』など、3万字を超える著作を残しており、その学問的貢献は非常に大きいものでした。陳寿（ちんじゅ）は、程秉を厳畯（げんしゅん）・闞沢（かんたく）と並び称し、「一代の学者であった」と高く評価しています。

小説『三国志演義』においては、孫権が呉の国主として賢人を集める場面で程秉が登場します。赤壁の戦いでは曹操への降伏を主張し、諸葛亮（しょかつりょう）との論戦であっけなく論破されるという描写がなされています。また、劉備（りゅうび）が関羽（かんう）の仇討ちのために呉に攻め込んできた際には、孫権の使者として劉備のもとに派遣され、張飛（ちょうひ）を暗殺した張達（ちょうたつ）らの身柄を引き渡しますが、劉備の怒りを鎮めることができず、命からがら呉に逃げ帰るという場面も描かれています。

このように、程秉は史実と物語の両方で、その名を知られる人物です。彼の学識と政治家としての手腕は、呉の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

参考文献
* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

脚注

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