種瀬茂

種瀬茂（たねせ しげる）

生涯

種瀬茂は、1925年1月18日に神奈川県横浜市で生まれ、1986年6月17日に逝去した日本の経済学者です。マルクス経済学を専門とし、一橋大学の学長を務めました。横浜市立横浜小学校、神奈川県立横浜第一中学校（現在の神奈川県立希望ヶ丘高等学校）を経て、東京商科大学（現在の一橋大学）に進学。東京商科大学では、杉本栄一ゼミナールに所属し、経済学の研究に励みました。

1948年に大学を卒業後、助手として大学に残り、杉本栄一の著書『近代経済学の解明』において、質問者の一人として貢献しました。その後、講師、助教授を経て、1965年に教授に就任。1979年から2年間は学部長を務めました。

1983年から2年間、野々村一雄一橋大学名誉教授の後任として経済理論学会の代表幹事を務め、同年7月13日には一橋大学の学長に就任しました。また、1985年には国立大学協会の副会長にも就任し、教育行政にも携わりました。

しかし、1986年の一橋大学学長選挙では、今井賢一商学部長が学生投票により除斥されるなど、混乱が生じました。次期学長が未定のまま、同年6月17日、種瀬茂は心労による心筋梗塞のため、在職中に急逝しました。

種瀬ゼミからは、寺西俊一（一橋大学名誉教授）、平井規之（元一橋大学教授）、疋田康行（立教大学名誉教授）、小島麗逸（大東文化大学名誉教授）、松下優（元首都大学東京教授）、磯谷明德（九州大学教授）、長島誠一（東京経済大学名誉教授）、徐明珠（香港中文大学日本研究学系主任）、川崎誠一（元名古屋大学教授）、唐渡興宣（北海道大学名誉教授）、盛田常夫（元法政大学教授）、中本悟（立命館大学教授）、森義隆（元中央大学教授）、井上義夫（一橋大学名誉教授）など、多くの著名な経済学者を輩出しました。

業績

種瀬茂は、マルクス経済学の理論的深化に大きく貢献しました。特に、資本主義経済における競争と恐慌のメカニズムに関する研究は、その後の経済学研究に大きな影響を与えました。また、経済思想史にも造詣が深く、幅広い知識に基づいた研究活動を展開しました。

著書

種瀬茂は、多数の著書を執筆しており、その研究成果は多くの学生や研究者に影響を与えました。主な著書には以下のものがあります。

『マルクス経済学：基礎研究』（春秋社、1966年、改訂版1968年）
『経済思想』（青木書店、1986年）
『競争と恐慌』（有斐閣、1986年）
（荒憲治郎との共同編集代表）『経済学用語の基礎知識』（有斐閣、1974年、増補版1980年）
『マルクス経済学の基礎知識』（共同編集代表、有斐閣、1976年）
（富塚良三・浜野俊一郎）『商品・貨幣』（有斐閣、1984年）
『資本論の研究』（青木書店、1986年）
『現代資本主義論』（青木書店、1986年）

これらの著作は、マルクス経済学の基礎理論から、現代資本主義の分析まで、幅広いテーマを扱っており、種瀬茂の経済学に対する深い理解と洞察を示しています。

訳書

W.C.ミッツェル『景気循環』（松石勝彦・平井規之との共訳、新評論、1972年）

人物

種瀬茂は、温厚で誠実な人柄で知られており、多くの学生や同僚から尊敬されていました。教育者としても優れており、学生の育成に尽力しました。その死は、日本の経済学界にとって大きな損失となりました。

脚注

種瀬茂の業績は、現代の経済学研究においても重要な示唆を与えています。彼の残した研究は、今後も長く参照され、経済学の発展に貢献していくでしょう。

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