稲生正武

稲生正武：江戸幕府を支えた旗本の生涯

稲生正武（いのう まさたけ）は、天和3年（1683年）に生まれ、延享4年（1747年）に65歳で没した江戸時代の旗本です。父は稲生正照で、通称は次左衛門、官位は下野守であったため、稲生下野とも呼ばれました。

幕府での活躍

元禄5年（1692年）、10歳で5代将軍徳川綱吉に拝謁し、26歳で家督を継ぎました。その後、御徒頭、目付と順調に昇進。徳川将軍家の血筋が途絶え、紀州藩から徳川吉宗が8代将軍に就任した後も、その能力を高く評価され、勘定奉行や大目付といった要職を歴任しました。大岡忠相と共に町奉行を分担して務めた時期もあり、幕政に深く関与しました。

主要な事績：江島生島事件と天一坊事件

稲生正武の事績の中でも特に重要なのは、江島生島事件と天一坊事件の追及への貢献です。

江島生島事件

江島生島事件では、当時目付であった正武は大目付仙石久尚、中町奉行坪内定鑑らと協力し、主犯である絵島や生島新五郎、および事件に関与した者たちへの尋問を担当し、裁定を下しました。正武は絵島に対して直接取り調べを行い、時には拷問を用いて自白を迫ったとされています。この峻烈な追及は「人を嵌めるものは落とし穴と稲生次左衛門」という落書きで市井の人々から風刺されるほどでした。後世の創作物、例えば『徳川風雲録 八代将軍吉宗』などでは、絵島を苛烈な拷問で追い詰める悪役として描かれる傾向があります。

天一坊事件

天一坊事件では、品川で捕縛された天一坊改行の取り調べを関東郡代伊奈忠逵と分担して担当し、天一坊の処断に大きく関与しました。この事件は正武と伊奈忠逵によって解決されたにもかかわらず、後世の講談などでは大岡忠相の功績として脚色されることが多いです。

晩年

延享4年8月15日（1747年）、稲生正武は65歳で病没しました。彼の功績は、江戸幕府の安定に大きく貢献したと言えるでしょう。

関連作品

稲生正武を題材とした、または彼をモデルとしたキャラクターが登場する作品を以下に紹介します。

『八代将軍吉宗』 - NHK 大河ドラマ（演：石橋雅史 ※「稲生次郎左衛門」の役名で登場）
『大岡越前 2019年スペシャル』 - NHK BSプレミアム BS時代劇（演：高橋光臣 ※「伊生正武」の役名で登場）

これらの作品を通して、稲生正武の人物像や彼が生きた時代に触れてみるのも良いでしょう。

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