坪内定鑑

坪内定鑑（つぼうち さだかね）

坪内定鑑は、江戸時代中期の旗本であり、江戸南町奉行と中町奉行を歴任した人物です。能登守、但馬守の官職を持ち、通称として源五郎、弥五郎を名乗りました。御先手鉄砲頭・坪内定次の次男として生まれ、兄に坪内定守がいます。後に定富を養子に迎えました。

生涯

1658年、4代将軍・徳川家綱に拝謁し、1667年に小姓組に列しました。しかし、翌1668年に兄・定守が同僚を斬殺する事件を起こし、家督を継ぐことになります。1697年には300石を加増され、1,100石を知行するようになりました。その後、書院番士から使番、御手先筒頭、火付盗賊改方加役と昇進を重ね、1705年には南町奉行に就任、能登守に叙任されました。2年間の南町奉行の後、1707年に中町奉行に異動し、1719年まで務めました。合計14年間、江戸の治安維持と事件の裁決に尽力し、その功績から1711年には幕府より褒賞を受けています。

1714年の江島生島事件では、目付・稲生正武、大[[目付]]・仙石久尚と共に事件の糾明・裁定にあたりました。絵島をはじめとする大奥の女中や事件に関与した者たちへの尋問を迅速に行いましたが、拙速を優先するあまり、流人証文に人物名を誤記するという失態を犯してしまいます。この責任を問われ、1ヶ月間将軍への拝謁を停止させられました。1719年に町奉行を辞任し、寄合となりました。1723年10月13日に75歳で亡くなっています。

中町奉行は、定鑑の辞職とともに廃止され、定鑑と丹羽長守の2名のみが務めた役職です。

人物

奉行としての定鑑は、地味ながらも堅実な仕事ぶりで知られています。与えられた職務を忠実にこなす一方で、新井白石らが推進した正徳の治には積極的に関与せず、一定の距離を置いていました。そのため、白石からは批判的な評価を受けています。江島生島事件の際には、仙石、稲生と共に民衆から「風向き次第に飛ぶ糸の切れた凧」と揶揄されるなど、風刺の対象にもなりました。

しかし、定鑑には弱者への配慮を示すエピソードも残っています。小伝馬町の牢屋敷に収容された囚人への差し入れが、牢名主によって横領されるという慣習を改め、役人から直接囚人に届くようにしました。これは、囚人たちの苦境を察し、改善しようとした定鑑の良心的な一面を示すものでしょう。

定鑑の死後、家督は甥で養子の定富（兄・定守の子）が継ぎました。

参考資料

丹野顯『江戸の名奉行―人物・事績・仕置きのすべて』新人物往来社
『寛政重修諸家譜』第16巻 ISBN 9784797102208 91頁
* 『徳川幕臣人名辞典』（東京堂出版）ISBN 978-4-490-10784-5 436頁

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