竈山神社

竈山神社の概要

竈山神社は、和歌山県和歌山市に位置する神社で、古くは「釜山神社」とも記されました。この神社は、格式高い式内社であり、かつては官幣大社という最高の社格に位置づけられていました。現在は神社本庁の別表神社となっています。

歴史的背景

神社の鎮座地である「竈山」は、『古事記』や『日本書紀』にも登場する由緒ある地名です。これらの書物によると、神武天皇の長兄である彦五瀬命が、この地に葬られたとされています。竈山神社は、その彦五瀬命の神霊を祀る神社であり、本殿の背後には彦五瀬命の墓と伝えられる「竈山墓」があります。この墓は宮内庁によって管理されています。

明治時代初期まで、竈山神社は小さな社でしたが、戦前の国家[[神道]]の発展に伴い、官幣大社に昇格し、社殿などが整備されました。また、境外摂社として、同じく式内社である静火神社を所管しています。

和歌山市内にある日前神宮・國懸神宮、伊太祁󠄀曽神社と合わせて、竈山神社に参拝することを「三社参り」と呼びます。これは、地域の人々にとって重要な慣習となっています。

祭神

竈山神社には、以下の神々が祀られています。

主祭神
彦五瀬命（ひこいつせのみこと）：神武天皇の長兄であり、別名「五瀬命」とも呼ばれます。
配祀神
左脇殿
稲飯命（いないのみこと）：彦五瀬命の弟神。
御毛入沼命（みけいりぬのみこと）：彦五瀬命の弟神。
神日本磐余彦命（かむやまといわれひこのみこと）：後の神武天皇であり、彦五瀬命の弟神。
右脇殿：神武東征に従軍した随身
高倉下命（たかくらじのみこと）：熊野の土豪。
可美眞手命（うましまでのみこと）：物部氏の祖。
天日方竒日方命（あめのひがたくしびがたのみこと）：大神氏の祖。
天種子命（あめのたねこのみこと）：中臣氏の祖。
天富命（あめのとみのみこと）：忌部氏の祖。
道臣命（みちのおみのみこと）：大伴氏の祖。
大久米命（おおくめのみこと）：久米氏の祖。
椎根津彦命（しいねつひこのみこと）：倭氏の祖。
頭八咫烏命（やたがらすのみこと）：賀茂氏の祖。

歴史の詳細

竈山神社の創建は、祭神である彦五瀬命の薨去に遡ります。彦五瀬命は、神武天皇の東征の際に長髄彦の軍との戦いで負傷し、その後、竈山に葬られたと伝えられています。この地に、彦五瀬命の神霊を祀ったのが竈山神社の始まりと考えられています。

『延喜式』神名帳には、「竈山神社」として記載されており、古くから重要な神社であったことがわかります。また、紀伊国神名帳では「従四位上 竈山神」と記されています。中世には鵜飼家が神職を世襲していましたが、天正13年（1585年）の羽柴秀吉による紀州征伐で社宝や古文書が失われ、社領も没収されました。

江戸時代には、紀州藩主・徳川頼宣によって社殿が再建されましたが、寺社奉行の支配下に置かれ、氏子や社領を失い衰退しました。しかし、明治時代に入り、近代社格制度において村社に列した後、官幣中社、そして官幣大社へと異例の昇格を遂げました。これは、村社から官幣大社まで昇格した唯一の例です。

現在の社殿は、1938年（昭和13年）頃に整備されたものです。1948年（昭和23年）には、神社本庁の別表神社に加列されました。

神職

竈山神社の神職は、明治時代まで鵜飼家が代々世襲していました。鵜飼家は、『古事記』に登場する贄持之子を祖とする家柄で、古くからこの地の神事を担っていました。鵜飼家文書によれば、79代まで続いたとされています。

境内

竈山神社の境内は、約3.5ヘクタールの広さがあります。現在の社殿は1939年（昭和14年）に造営されたもので、かつては現在の場所から約100メートル東南に位置していました。

本殿：春日造檜皮葺で、寛文9年（1669年）に徳川頼宣によって再建されました。
左脇殿・右脇殿：本殿と同様に、寛文9年（1669年）に再建されました。
幣殿・拝殿：同じく寛文9年（1669年）に再建されたものです。
西門・神門・社務所・池など、境内には様々な施設があります。

摂末社

境内には、以下の摂末社があります。

境内社
合祀神社
結神社
子安神社
青葉神社
境外社
静火神社：式内名神大社である「静火神社」の後継社です。

祭事

竈山神社では、年間を通して様々な祭事が行われています。

竈山墓

竈山墓は、竈山神社の本殿後背にある古墳で、宮内庁によって彦五瀬命の墓に治定されています。この古墳は円墳であり、直径約6メートル、高さ約1メートルの墳丘です。

『延喜式』には「竈山墓」として記載されており、古代には重要な陵墓であったと考えられています。しかし、中世以降、所在が不明となり、明治時代に現在の古墳が「竈山墓」として治定されました。

アクセス

所在地：和歌山県和歌山市和田438
交通アクセス：和歌山電鐵貴志川線　竈山駅より徒歩約10分

竈山神社は、歴史と文化が深く根付いた神社であり、多くの人々に信仰されています。その歴史的な背景や美しい社殿は、訪れる人々を魅了し続けています。

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