竜山石

竜山石（たつやまいし）

竜山石は、兵庫県の加古川下流右岸から産出される石材の一つで、別名を宝殿石（ほうでんいし）とも呼ばれています。この石は、その柔らかさと加工の容易さが特徴であり、古くから石材としての利用が進められてきました。具体的には、石棺、礎石、石垣、石仏など、さまざまな形の造形物に使用されてきました。近年では文化財の修復にも利用されており、鳥取藩主池田家の墓所や山本能楽堂の修復作業でも活躍しています。

特徴

竜山石の採石場は、竜山と宝殿山にまたがる地域に位置しており、ここには生石神社があり、そこには石の宝殿と呼ばれる巨大な竜山石の神体が祀られています。この神体は、幅6.7メートル、高さ5.2メートルの巨大な石で、その存在は地域の信仰の対象となっています。

歴史

形成

竜山石は、約1億年前の白亜紀後期に起こった火山活動によって形成された火砕流の堆積物からなっています。噴出した溶岩が急速に冷却され、割れて流された後に堆積したと考えられており、古くは凝灰岩の一種とされましたが、近年の研究によりハイアロクラスタイト（水冷破砕溶岩）であることが確認されました。播磨地域全体には火山活動によって形成された石が広がっていますが、特に竜山石は加工がしやすい点で特筆すべきです。

古代

古墳時代には、仁徳天皇陵の石棺に竜山石が使用され、7世紀頃には生石神社の神体として扱われるようになりました。これにより、竜山石は古代からその素材の重要性が認識されていたことが伺えます。

中世・近世

鎌倉時代から室町時代にかけては、竜山石を用いて五輪塔や宝篋印塔、石仏などの製作が行われ、これらの石造物は現代の兵庫県や大阪府、京都府にも多数残されています。また、江戸時代初期には、明石城など近世の城郭においても竜山石が使用されており、1836年には姫路藩の専売品としても重宝がられました。鳥居や燈籠、狛犬、石臼などの多種多様な石造物が作られ、河川舟運を通じて西日本各地に流通しました。

近代・現代

明治以降においても、竜山石の需要は続き、1871年には旧造幣寮鋳造所（大阪市）の建設に用いられ、さらには1926年には三井住友銀行大阪本店ビル、1928年には京都ホテル旧館など、多くの著名な建物にその外壁として使用されています。21世紀に入った現在でも、採掘が続き、新たな記念碑や石垣が生み出されています。また、2014年には「石の宝殿及び竜山石採石遺跡」として国の史跡に指定され、その価値が認められています。

竜山石が使用されている建築物

関東地方

• - 皇居吹上御苑御所（東京都千代田区）

中部地方

• - 名古屋市公会堂（1930年竣工、愛知県名古屋市）

近畿地方

• - 旧造幣寮鋳造所（1871年竣工、大阪府大阪市）
• - 三井住友銀行大阪本店ビル（1926年竣工、大阪府大阪市）
• - ダイビル本館（1926年竣工、大阪府大阪市）

建築物以外の利用

• - 仁徳天皇陵石棺（大阪府堺市）
• - 平城宮礎石（京都府京都市）
• - 恭仁宮礎石（京都府木津川市）
• - 飛鳥大仏台座（奈良県高市郡明日香村）

このように、竜山石は長い歴史を持ち、その利便性からさまざまな用途に用いられつづけている重要な石材なのです。

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