竹売

竹売（たけうり）とは

竹売とは、中世（12世紀 - 16世紀）から江戸時代（17世紀 - 19世紀）にかけて存在した日本の行商人のことです。時代や地域によってその形態は異なりましたが、竹を生活の糧とする人々の姿を今に伝えています。

中世の竹売

中世においては、特に山科家を本所とし、竹を貢納および販売する者を「竹供御人（たけくごにん）」といいました。彼らは、朝廷に竹を貢納する代わりに、竹の販売を独占する特権を与えられていました。また、山科家に属する散所（さんじょ）にあって竹を販売する者は、「竹売散所者（たけうりさんじょもの）」と呼ばれていました。

室町時代（14世紀 - 16世紀）に入ると、経済流通や交通が発展し、農民が自ら伐採した竹を売る「竹売」に進出する例も見られました。しかし、京都においては、山城国宇治郡山科荘（現在の京都市山科区）の山科家を本所とする「竹供御人」が依然として強い力を持っており、独占的な販売を続けていました。

山科家の「竹供御人」は、紀伊郡深草（現在の京都市伏見区深草）と宇治郡木幡（現在の京都府宇治市木幡）の2か所に存在していました。1481年（文明13年）には、深草と木幡の「竹供御人」どうしが利権を争い、「伏見ハひさしき供御人、小幡ハちかし」（伏見の深草は古来の供御人であり、木幡は最近のものである）と判定された記録が残っています。このことからも、竹売の世界における縄張り争いが存在したことがうかがえます。

その他、「山科散所」の者たちも、「竹うり散所者（竹売散所者）」として竹を販売していました。当時、掃部助・大沢重有が差配していたこの「竹売散所」の所在地は、残念ながら現在では不明です。

15世紀末の1494年（明応3年）に編纂された『三十二番職人歌合』には、材木を売る「材木売」とともに「竹売」が紹介されており、当時の社会において竹売が一定の認知度を得ていたことがわかります。

江戸時代の竹売

江戸時代になると、竹売の形態は変化を見せます。江戸（現在の東京都）では、切った篠竹（メダケ）を、「タケヤ」を連呼しながら売り歩く行商人が「竹売」と呼ばれるようになりました。彼らは、街中を歩き回り、日々の生活に必要な竹を人々に提供していました。

また、店を構えて竹を販売する者は「竹屋」と呼ばれ、地域の人々の生活を支える存在として親しまれていました。

まとめ

竹売は、中世から江戸時代にかけて、竹を販売することで生計を立てていた人々の総称です。山科家を本所とする竹供御人、散所の竹売、そして江戸時代の行商人など、様々な形態がありましたが、いずれも竹という資源を人々の生活に届ける重要な役割を担っていました。竹売の歴史を紐解くことは、当時の経済や社会、そして人々の暮らしを知る上で貴重な手がかりとなるでしょう。


参考文献
『江戸時代の職人尽彫物絵の研究 - 長崎市松ノ森神社所蔵』、小山田了三・本村猛能・角和博・大塚清吾、東京電機大学出版局、1996年3月 ISBN 4501614307
『散所・声聞師・舞々の研究』、世界人権問題研究センター、思文閣、2004年12月 ISBN 4784212191

関連項目
物売り
行商
供御人
散所
山科家

外部リンク
世界大百科事典 第2版『竹売』 - コトバンク

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