第三次マラーター戦争

第三次マラーター戦争：イギリスによるインド支配確立の決定的な戦い

第三次マラーター戦争は、1817年から1818年にかけて、北インドと中央インドを舞台に繰り広げられたイギリス東インド会社とマラーター同盟の間の戦争です。この戦争は、マラーター戦争の最後を飾る戦いであり、両勢力の最終決戦となりました。

開戦に至る背景

第二次マラーター戦争後、マラーター勢力は一時的にイギリスと講和を結んでいました。しかし、その平和は長くは続きませんでした。まず、1811年に、イギリス打倒を目指していたホールカル家の当主ヤシュワント・ラーオ・ホールカルが急逝。幼い息子が後を継いだことで、ホールカル家の勢力は弱まります。

また、1806年初頭から、ホールカル家、シンディア家、ボーンスレー家などの領土を含む中央インドで無政府状態が蔓延。マラーターの補給部隊であった盗賊ピンダーリーが勢力を拡大し、イギリスの植民地を略奪するようになります。ピンダーリーは、職を失ったマラーターの兵士たちを吸収し、マラーター諸侯と結びついていました。

さらに、マラーター同盟内部でも紛争が起こります。マラーター王国の宰相バージー・ラーオ2世は、1802年にイギリスとバセイン条約を締結して諸侯の反感を買い、第二次マラーター戦争の原因を作りましたが、またもや同様の過ちを繰り返します。1814年には、グジャラートの重要都市アフマダーバードをめぐり、バージー・ラーオ2世の宰相府とガーイクワード家との間で争いが勃発。イギリスが調停に乗り出しますが、1815年、ガーイクワード家の使節がバージー・ラーオ2世の家臣に暗殺される事件が発生し、事態は悪化します。

バージー・ラーオ2世は、この家臣をかくまい、他のマラーター諸侯に挙兵を呼びかけ、イギリスとの対決姿勢を強めました。

プネー条約と開戦

こうした動きを察知したイギリスは、1817年6月、バージー・ラーオ2世に新たな条約「プネー条約」を押し付けます。この条約は、マラーター同盟の外交権をイギリスに委ね、事実上、同盟の解体を強いるものでした。イギリスは、マラーター同盟を藩王国化する動きを加速させたのです。バージー・ラーオ2世は、この条約を受け入れざるを得ませんでしたが、密かに戦の準備を進めていました。

1817年10月、バージー・ラーオ2世はヒンドゥー教の祭礼を機に、イギリス軍を威嚇する行動に出ます。イギリスとマラーター同盟の緊張は頂点に達し、ついに戦争へと突入します。

マラーター側は、歩兵81,000、騎兵106,000、大砲589門という大軍を擁していました。しかし、その内訳は、宰相バージー・ラーオ2世が最も多くの兵力を持ち、ホールカル家、シンディア家、ボーンスレー家がそれに続きました。また、ピンダーリーの軍勢も加わり、戦力はさらに増大していました。

戦争の経過

1817年11月、バージー・ラーオ2世は、プネー近郊のカドキーにあるイギリス駐在官邸を攻撃し、第三次マラーター戦争が勃発します。しかし、緒戦のカドキーの戦いでマラーター側は大敗を喫します。イギリスは、この戦いの同日にシンディア家とグワーリヤル条約を締結し、ピンダーリー掃討への協力を取り付けます。さらに、トーンクのアミール・ハーンもイギリスと軍事保護条約を結び、マラーター勢力は各個撃破されていきます。

デカンでは、次々とマラーター側の拠点が陥落し、11月17日にはイギリス軍がプネーに入城します。ボーンスレー家、ホールカル家も相次いでイギリスに敗北し、軍事保護条約を締結せざるを得なくなります。

1818年1月、バージー・ラーオ2世はコーレーガーオンでイギリス軍と戦いますが、再び敗北。この戦いでは、不可触民であるダリットがイギリス軍を支援し、カースト制度を揺るがす事態となりました。バージー・ラーオ2世は逃亡を続けますが、2月にはマラーター王国の首都サーターラーがイギリス軍に占領されます。

逃亡中のバージー・ラーオ2世を追撃したイギリス軍は、アーシュティーで彼を追い詰めます。この戦いで、バージー・ラーオ2世の忠臣であるバープー・ゴーカレーが戦死。4月までにプランダルとシンハガドが占領され、6月、バージー・ラーオ2世はついにイギリスに降伏し、第三次マラーター戦争は終結しました。

戦後処理とイギリスによるインド支配の確立

バージー・ラーオ2世の降伏により、マラーター同盟は名実ともに消滅しました。バージー・ラーオ2世は宰相府の領土を没収され、ビトゥールに追放されます。

マラーター王国とマラーター諸侯の領土は藩王国となり、イギリスの間接支配下に置かれました。また、シンディア家やホールカル家の支配下にあったラージプート諸王国も、イギリスとの軍事保護条約を結び、藩王国化しました。

第三次マラーター戦争における勝利によって、イギリスはインド最大の政治勢力であったマラーター同盟を滅ぼし、広大なインドの領土を支配するに至ります。これによって、インドの植民地化は大きく進展し、イギリスのインド支配が確立しました。残る勢力は、北西インドのシク王国のみとなりました。

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