第三者無線

第三者無線（MCA無線）とは

第三者無線（Third party radio system）は、アメリカのマルチチャネルアクセス無線技術を基にした業務無線システムです。複数の利用者が複数の無線チャネルを共同利用する点が特徴で、効率的な周波数利用を可能にしています。制御局が指令を出し、全ての通信を中継することで、利用者間の直接通信は行われません。日本では、MCA無線、mcAccess、JSMR、NEXNETなど、複数の名称で呼ばれています。

定義

総務省令無線設備規則では、MCA陸上移動通信は、複数の無線局で共通に割り当てられた周波数帯を、MCA制御局の指示に従って利用する無線通信と定義されています。デジタルMCA陸上移動通信は、デジタル方式を用いた同様の通信を指します。制御局は通信の中継を行い、指令局と移動局の間で通信が行われます。

概要

利用形態

利用者である企業や団体は指令局と移動局の免許人となり、制御局は第三者事業者が免許を取得します。制御局の管理には無線従事者が必要ですが、指令局や移動局には不要です。無線設備は技術基準に適合している必要があり、免許手続きは事業者や代理店が代行することが一般的です。免許の有効期間は5年で、条件により外国籍の者でも利用可能です。

歴史

1982年に開始された当初は、物流業者などの利用が中心でしたが、1997年以降、一般的な業務利用が拡大しました。個人事業者も利用可能となり、2局から開局できます。当初は陸上のみが対象でしたが、後に平水区域、沿岸海域へと利用範囲が広がりました。災害時にも安定した通信が可能で、緊急通信システムとして公共機関や企業で採用されています。

事業者

かつては複数の事業者が存在しましたが、現在は移動無線センター（MRC）が独占的にサービスを提供しています。

他の通信システムとの比較

携帯電話やPHSに比べ、少ない無線局で帯域を占有できるため、輻輳が起こりにくいという利点があります。しかし、近年ではより安価なIP無線への移行が進んでいます。

特徴

全国主要地域をカバーする中継局が設置されており、広範囲での利用が可能。
NTTドコモの通信エリア内であれば、全国どこでも利用できる付加サービスも存在。
プレストーク方式（片通話）を採用。
通話時間には制限がある。
定額制料金が基本。
移動端末は堅牢で高出力、車載型が中心。
一斉同報通信が可能。
制御局は高い場所に設置され、広いエリアをカバー。
災害時にも強いシステム。
公衆交換電話網に依存しないため、災害時の影響を受けにくい。
輻輳時に優先的に通話できる予約機能。
運転中の車載型無線機の使用は交通規制の対象外。
市町村防災行政無線としても利用可能。

用途

陸上交通事業者（バス、タクシー、トラックなど）。
内航海運事業者。
メンテナンス、営業、配送業務。
企業や団体の災害通信。
水道、電力、ガスなどのインフラ事業者。
* 地方公共団体での防災無線。

システム

デジタル方式

制御局間をIP-VPNで接続し、全国通信を可能にするデジタル方式が主流です。

アナログ方式

アナログ方式は周波数再編により、利用が終了しています。

周波数再編

携帯電話の普及に伴い、周波数帯の逼迫から、MCA無線は周波数帯の再編が行われました。800MHz帯の周波数が変更され、アナログ方式は廃止されました。

地域振興用陸上移動通信システム

地域振興を目的とした団体が利用できるマルチチャネルアクセス無線です。地域団体が基地局を設置し、会員間で相互通信が可能です。基地局には無線従事者が必要ですが、移動局には不要です。

規格

周波数

400MHz帯が使用されています。

通信方式

二周波数半複信方式を採用。

その他

音声通信、同報通信、ショートメッセージ、ページングなどの機能があります。電波産業会（ARIB）が規格を標準化しています。

電波利用料

無線局の種類によって、電波利用料が定められています。

表示

技術基準に適合した無線設備には、適合マークが表示されます。

その他

空港無線電話

空港MCA無線としてマルチチャネルアクセス無線技術が利用されています。

運転中の通話

運転中の無線通話は原則禁止ですが、車載型無線機の使用は規制対象外です。

まとめ

第三者無線（MCA無線）は、業務効率化や災害対策に不可欠な通信システムです。デジタル化が進む一方で、IP無線への移行も進んでいますが、その特性から、引き続き様々な分野で活用されています。

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