第四次イタリア戦争

第四次イタリア戦争：16世紀のイタリアを揺るがした大戦

第四次イタリア戦争は、16世紀に勃発したイタリア戦争の一環であり、フランス王フランソワ1世と神聖ローマ皇帝カール5世（スペイン王も兼ねる）が、北イタリアの領土、特にミラノ公国を巡って激しく争った戦いです。この戦争は、フランス軍が北イタリアに侵攻し、スペイン軍がフランスに侵攻するという、複雑な戦局となりました。1538年にニースの和約が締結され、フランスがトリノを得たものの、イタリアの版図は大きく変わることはありませんでした。しかし、この戦争を通して、スペインのイタリアに対する支配が強まり、イタリアの独立の時代は終焉を迎えました。また、フランスとスペインの対立が決定的なものとなり、両国は長きにわたる敵対関係へと突入しました。一方、フランスに味方したオスマン帝国は、フランスとの間に蜜月関係を築くこととなりました。

背景

遠因

1500年、フランス王ルイ12世は、グラナダ条約でフェルナンド2世とナポリ分割について合意しました。この条約に基づき、両者はナポリ王フェデリーコ1世を廃位しました。この決定は、ニッコロ・マキャヴェッリをはじめとする当時の知識人から批判され、民衆もこの批判を支持しました。1519年にカール5世が神聖ローマ皇帝に即位し、帝国とスペインが同君連合となったことで、民衆の支持はさらに高まりました。これが、フランスとスペインがイタリアを巡って争うきっかけとなりました。

近因

戦争の直接的な原因は、1535年にミラノ公フランチェスコ2世・スフォルツァが後継者なく亡くなったことでした。これにより、スフォルツァ家のミラノ支配が終結し、カール5世がミラノ公位を継承しました。しかし、この決定にフランスは強く反発し、オスマン帝国と同盟を結んで対抗しました。オスマン帝国はフランスを支援するために軍隊を派遣し、フランス軍はマルセイユやピエモンテなど、ジェノヴァ近くの標的への進軍を支援しました。

経過

カール5世の子フェリペがミラノ公位を継承すると、フランソワ1世はイタリアに侵攻しました。1536年3月、フランス軍はピエモンテに進軍し、翌月にはトリノを陥落させましたが、ミラノの包囲は失敗に終わりました。カール5世は反撃し、プロヴァンスに侵攻してエクス＝アン＝[[プロヴァンス]]まで進軍しましたが、フランス軍がマルセイユへの道を封鎖したため、進軍は停止しました。その後、カール5世は防御を固めたアヴィニョンを攻めることなく、スペインへ撤退しました。この際、フランス軍が皇帝軍に赤痢を蔓延させるために、わざと腐った果物を木の上に置いたという逸話も残っています。

カール5世がフランスで領土を拡大している間、イタリアではフランスの侵攻が続いていました。フランソワ1世の軍勢はピエモンテで補給を終え、ジェノヴァへ進軍しました。また、1536年にはジャン・ド・ラ・フォレの外交努力によってオスマン帝国との同盟が成立し、年末にはマルセイユでフランス＝オスマン連合艦隊が集結し、ジェノヴァを脅かしました。連合艦隊がジェノヴァを砲撃する一方で、フランス陸軍がジェノヴァを包囲するという作戦も立てられましたが、幸運なことにジェノヴァは守備を大幅に強化していました。その代わりに、連合軍はピエモンテで略奪行為を繰り返し、多くの城を占領しました。1537年には、バルバロス・ハイレッディンがイタリア沿岸で海賊行為を繰り返した後、コルフを包囲しましたが、フランスの直接的な助けにはなりませんでした。

カール5世は、緒戦で不利だった上、フランスとオスマン帝国の二正面作戦の危険もあったため、最終的にフランソワ1世と和解し、1538年6月18日にニースの和約を締結して戦争を終結させました。

影響

ニースの和約によって、トリノはフランスに割譲されましたが、イタリアの版図には大きな変化はありませんでした。この時、両王は互いを憎み、同席することを拒否したため、仲介役を務めた教皇パウルス3世が、両王の部屋を往復することになりました。この戦争によってオスマン帝国との緊張が高まり、カール5世はオスマン帝国への対応に追われ、9月28日のプレヴェザの海戦で敗北を喫しました。一方、フランスはオスマン帝国との同盟が有益であると考え、その後も同盟を継続しました。

この戦争で明らかになったことは、スペインがイタリアへの支配を強化し、イタリアの独立が終焉を迎えたこと、そしてイタリアが統一された国家ではなく、多くの思惑が入り混じる諸国の集合体であったことです。これは、イタリアが外敵の侵入に晒されやすいことを意味しており、後に第五次イタリア戦争で現実となりました。さらに、軍隊が頻繁に侵攻し、略奪を繰り返したため、イタリアは荒廃しました。

また、この戦争はスペインとフランスの敵対関係を決定的なものとしました。その後の争いは、すべて両国の領土と影響力を巡るものでした。この戦争は両国の財政を悪化させましたが、1547年にフランソワ1世が亡くなった後も、後継者のアンリ2世は和解することなく、スペインと帝国との戦争を継続しました。

参考文献

Bury, J.B. (1902), “Chapter 3: The Ottoman Conquest”, in Dalberg-Acton, John, The Cambridge Modern History, Volume 1: The Renaissance, Cambridge University Press, pp. 72–73
Mattingly, Garrett (1955), Renaissance diplomacy, Penguin Books, p. 155, ISBN 978-0486-25570-5
* Potter, David (2008), Renaissance France at War, Woodbridge: Boydell Press, pp. 30-37

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