第10飛行師団 (日本軍)

第10飛行師団：本土防空の要

第10飛行師団は、1944年3月に編成された日本陸軍の飛行師団です。太平洋戦争末期、本土防空の要として関東地区を中心に活動しました。

編成と役割

1944年3月、中部太平洋方面の戦況悪化に伴い、本土防空体制を強化するため、第17飛行団を改編し、第10飛行師団が臨時編成されました。司令部は当初、調布飛行場に置かれましたが、後に神田区へ移転しました。隷下部隊は東京、千葉、茨城、埼玉などに配置され、主に防空任務に従事しました。

隷下部隊（編成時）

• - 独立飛行第17中隊（一〇〇式司令部偵察機）
• - 飛行第18戦隊（三式戦闘機「飛燕」）
• - 飛行第47戦隊（二式単座戦闘機「鍾馗」）
• - 飛行第244戦隊（三式戦闘機）
• - 東部軍直協飛行隊

地上部隊

• - 第3飛行場大隊
• - 第6飛行場大隊
• - 第7飛行場大隊
• - 第43飛行場大隊
• - 第244飛行場大隊
• - 第1対空無線隊
• - 第2対空無線隊
• - 第17航空情報隊

指揮下には、飛行第1戦隊（一式戦闘機「隼」）と飛行第70戦隊（二式単座戦闘機）もありました。その後、飛行第53戦隊（二式複座戦闘機「屠龍」）などが加わり、さらに、各飛行学校の教官や優秀な操縦者を臨時に「東二号部隊」として指揮下に入れました。

戦闘の推移

1944年7月末、飛行第70戦隊が満州へ派遣され、その後、飛行第1戦隊、飛行第18戦隊もフィリピンへ転出。代わりに飛行第23戦隊が編入されました。11月には、アメリカ軍によるB-29爆撃機による本土空襲が開始され、第10飛行師団は迎撃を試みるも、高高度性能の劣る日本軍機では有効な戦果を上げられませんでした。そのため、防弾鋼板や機関砲を取り除き軽量化した戦闘機で敵機に体当たり攻撃を行う特攻隊を編成しました。この特攻隊は後に「震天制空隊」と命名されました。


1944年末には、2か月の防空戦で、出撃回数40回、撃墜確実28機（うち16機は特攻）、撃墜不確実24機、撃破60機を記録しました。しかし、アメリカ軍側の資料では、B-29の損失率は昼間攻撃で1.5％、夜間攻撃で0.95％とされており、日本側の戦果報告とは大きな隔たりがありました。


1945年1月以降、B-29による空襲は激化し、第10飛行師団は連日迎撃に当たりました。1月3日の空襲では、大阪から名古屋方面へ侵入したB-29に対し、第11飛行師団の支援を行いました。1月9日の迎撃戦では、体当たり攻撃を含め11機撃墜を報告しましたが、多くの損害も出ました。1月27日には、東京東部地区への空襲に対して、全力で迎撃するも、多くの損害を受けました。


2月には、アメリカ軍機動部隊による艦載機による攻撃を受け、各飛行場は大きな損害を受けました。しかし、第10飛行師団は反復して迎撃を続けました。2月17日には、戦力温存を重視する防衛総司令部の方針により、戦力が制限されました。


2月19日には、B-29爆撃機による無差別爆撃で東京が大きな被害を受け、第10飛行師団は特別操縦見習士官が敢闘し、撃墜21機を報告しました。2月25日には、艦載機とB-29による攻撃が同時発生し、第10飛行師団は迎撃に注力したものの、大きな損害を受けました。



3月1日、吉田喜八郎少将が異動し、近藤兼利中将が新師団長に就任しました。近藤中将は本土決戦のための戦力温存を重視し、迎撃作戦を制限する方針を取りました。


3月10日、東京大空襲が発生し、第10飛行師団は迎撃を試みましたが、天候不良により十分な戦果を上げられませんでした。その後、夜間の邀撃戦力を強化しましたが、大規模な敵機来襲はなく、迎撃は限定的になりました。


4月には、B-29に加え、P-51戦闘機による攻撃も始まりました。4月13日には、東京北西部への空襲に対し、撃墜38機を報告しました。4月15日には、京浜地区への空襲に対し、撃墜70機以上と報じられました。



4月15日、航空総軍が創設され、第10飛行師団は再び第1航空軍の隷下に入りましたが、作戦指揮は第12方面軍の指揮下となりました。二重の指揮系統となり、部隊の運用は複雑化しました。第30戦闘飛行集団の指揮下に入っていた飛行第47戦隊、飛行第244戦隊などは第10飛行師団の隷下を離脱しました。


5月24日には、再び東京が大規模な空襲を受け、撃墜約30機を報告しましたが、米軍の記録とはずれがありました。

戦争終結

1945年6月下旬、航空総軍は本土の防空統一作戦を策定し、第10飛行師団は7月10日に第1航空軍に復帰しました。その後も、関東地区への空襲は続き、第10飛行師団は迎撃を続けました。7月には、特別攻撃隊も編成されました。


8月15日、終戦となり、第10飛行師団は武装解除と復員を行いました。

終戦時の隷下部隊

• - 飛行第18戦隊（五式戦闘機）
• - 飛行第23戦隊（四式戦闘機）
• - 飛行第53戦隊（二式複座戦闘機）
• - 飛行第70戦隊（四式戦闘機）
• - 第46航空地区司令部
• - 各飛行場大隊

指揮官

• - 師団長

- 佐藤正一 少将（1944年3月9日 - 1944年3月28日）※心得
- 吉田喜八郎 少将（1944年3月28日 - 1945年3月1日）※心得
- 近藤兼利 中将（1945年3月1日 - 終戦）

• - 参謀長

- 岡本修一 大佐（1944年3月9日 - 1945年2月20日）
- 笹尾宏 中佐（1945年2月20日 - 終戦）


第10飛行師団は、本土防空の要として、厳しい戦況の中、最後まで戦い抜きました。その活動は、太平洋戦争末期の日本の防空体制を語る上で、重要な史実です。

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