飛行第244戦隊

飛行第244戦隊：首都防衛を担った精鋭飛行隊

飛行第244戦隊は、大日本帝国陸軍に所属した飛行戦隊の一つで、主に首都圏の防空を任務としていました。近衛師団に準ずる部隊として「近衛飛行隊」とも呼ばれ、その精鋭ぶりは内外に知られていました。

編成と変遷

1941年8月、飛行第144戦隊として編成されたのが始まりです。翌1942年4月には、西日本方面の防空体制強化に伴い、飛行第244戦隊へと改称されました。部隊の通称号は帥三四二一三部隊、軍隊符号は244FRまたは244Fでした。

歴代の戦隊長には、泊重愛少佐、村岡進一少佐、藤田隆少佐などが名を連ねますが、特に有名なのが、大戦後期に24歳という若さで戦隊長に就任した小林照彦少佐（着任時は大尉）です。彼自身もエースパイロットであり、その活躍は多くの記録に残されています。

部隊は東京の調布陸軍飛行場を拠点とし、当初は九七式戦闘機を装備していました。1943年7月には三式戦闘機「飛燕」に機種改変しましたが、エンジンの不調に悩まされる時期もありました。しかし、整備員の懸命な努力により、高い稼働率を維持しました。

1944年2月には、陸軍航空部隊の編制改正に伴い、中隊編制から飛行隊編制へと移行しました。この際、各中隊は以下のように改称されました。

旧第1中隊 → そよかぜ隊（第1飛行隊）
旧第2中隊 → とっぷう隊（第2飛行隊）
旧第3中隊 → みかづき隊（第3飛行隊）

これらの名称は、無線電話で使用されるコールサインとしても使用されました。また、この時期には夜間戦闘能力の向上が図られ、陸軍航空部隊では単座戦闘機でも夜間戦闘スキルが求められました。

B-29邀撃戦と終戦

1944年11月以降、B-29爆撃機の来襲が激化すると、第244戦隊は邀撃戦に投入されました。震天隊による体当たり攻撃を含む果敢な戦いは、連日新聞やニュース映画で報道されました。12月頃からは、浜松陸軍飛行場などに展開し、アメリカ海軍機動部隊の艦載機邀撃や、中京地区の防空任務にもあたりました。

1945年4月頃からは、B-29にP-51戦闘機が随伴するようになり、苦戦を強いられるようになりました。戦力温存のため、艦載機への邀撃は禁止されました。しかし、18回に及ぶ体当たり攻撃を行い、そのうち7名が戦死しました。

1945年4月下旬には、五式戦闘機が制式化されると、ただちに機種変更を実施。5月15日には、その功績を称えられ、第1総軍司令官から部隊感状が贈られました。感状によれば、B-29を73機撃墜、92機撃破、F6Fを10機撃墜、2機撃破、SB2Cを1機撃墜したとされています。これは、「飛燕」装備の飛行戦隊の中ではトップの戦果でした。

5月には知覧陸軍飛行場へ展開し、沖縄戦の特攻機援護任務に就きました。沖縄戦終結後は、小牧陸軍飛行場や八日市陸軍飛行場を転戦し、一度も外地に派遣されることなく終戦を迎えました。そして、同年8月末に解隊されました。

戦隊のエースたちとその後

第244戦隊には、多くのエースパイロットが所属していました。みかづき隊長（第3飛行隊長）の白井長雄大尉を筆頭に、市川忠一大尉、浅野二郎曹長、小原伝大尉、生野文介大尉、小林照彦少佐、佐藤権之進准尉などが名を連ねています。

また、とっぷう隊長（第2飛行隊長）だった竹田五郎大尉は、戦後、警察予備隊を経て航空自衛隊に入隊し、航空総隊司令官や航空幕僚長を歴任、自衛隊制服組のトップである第12代統合幕僚会議議長に就任しました。元戦隊長の小林少佐も航空自衛隊に入隊し、第244戦隊も展開していた浜松基地で教官を務めましたが、1957年に訓練中の事故で殉職しました。

さらに、後の内閣総理大臣となる竹下登が、特別操縦見習士官として、俳優・演出家の芥川比呂志が整備隊本部付として、第244戦隊に在籍していました。

部隊情報

飛行分科：戦闘
編成時期：1942年4月（飛行第144戦隊を改編）
編成地：調布（東京）
使用機種：九七式戦闘機、三式戦闘機「飛燕」、五式戦闘機
終戦時の所在地：八日市（滋賀）

第244戦隊は、首都防衛という重要な任務を担い、数々の激戦を戦い抜きました。その活躍は、戦史に深く刻まれています。

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