第40回世界遺産委員会

第40回世界遺産委員会の概要

第40回世界遺産委員会は、2016年7月と10月に、トルコのイスタンブールとフランスのパリで開催されました。当初、イスタンブールでのみ開催される予定でしたが、会期中に発生したクーデター未遂事件により、会議は中断を余儀なくされました。その後、残りの議題はパリのユネスコ本部で審議されました。

会議の主な出来事

イスタンブールでの会議中断: 7月10日から開催されたイスタンブールでの会議は、7月16日に発生したクーデター未遂事件の影響で中断されました。翌日にはイスタンブールでの会議が打ち切られ、残りの議題はパリへと持ち越されることになりました。
パリでの会議再開: 10月24日から26日にかけて、パリのユネスコ本部で会議が再開されました。この会議で、中断された議題の審議や、新たな世界遺産の登録などが決定されました。

新規登録された世界遺産

この委員会では、文化遺産12件、自然遺産6件、複合遺産3件の計21件が新たに世界遺産に登録されました。これにより、世界遺産リスト登録物件の総数は1,052件となりました。また、ミクロネシア連邦とアンティグア・バーブーダが新たに世界遺産を保有する国として加わりました。

委員国

世界遺産委員会の委員国は以下の通りです。地域区分はユネスコの基準に準拠しています。

アフリカ: アンゴラ、ブルキナファソ、コンゴ共和国、モザンビーク、タンザニア
アラブ諸国: レバノン、カタール、チュニジア
アジア太平洋: インドネシア、日本、カザフスタン、フィリピン、韓国、ベトナム
ヨーロッパ、北アメリカ: フィンランド、ポーランド、ポルトガル、トルコ
ラテンアメリカ、カリブ: キューバ、ジャマイカ、ペルー

審議対象の推薦物件

委員会では、多数の推薦物件が審議されました。特に、拡大登録や名称変更を伴う物件も含まれており、その結果、いくつかの物件の名称が変更されました。新規に世界遺産保有国となったのは、アンティグア・バーブーダとミクロネシア連邦の2か国です。これにより、世界遺産条約締約国192か国のうち、世界遺産を保有していない国は27か国となりました。

自然遺産

(具体的なリストは省略。原文参照。)

複合遺産

(具体的なリストは省略。原文参照。)

文化遺産

(具体的なリストは省略。原文参照。)

危機遺産

危機にさらされている世界遺産（危機遺産）のリストには、リビアの5件全ての世界遺産が加えられました。一方で、ムツヘタの歴史的建造物群（ジョージア）がリストから除去されました。新たにリストに追加されたのは、以下の通りです。

レプティス・マグナの考古遺跡（リビア）
サブラタの考古遺跡（リビア）
キュレネの考古遺跡（リビア）
タドラルト・アカクスの岩絵遺跡群（リビア）
ガダミスの旧市街（リビア）
シャフリサブス歴史地区（ウズベキスタン）
ジェンネ旧市街（マリ）
ナンマトル:東ミクロネシアの祭祀センター（ミクロネシア連邦）

名称変更

いくつかの世界遺産の名称が変更されました。特に、英語名やフランス語名のみが変更された例もあります。

(具体的なリストは省略。原文参照。)

その他の議題

富士山: 登山者数抑制や噴火時の危機管理対策に関する報告書が審議され、概ね了承されましたが、三保松原や構成資産外の巡礼路の特定が求められました。
明治日本の産業革命遺産: 旧集成館付近の道路拡幅や三重津海軍所跡の橋梁建設に伴う景観問題、韮山反射炉の来訪者施設に関する中間報告が行われる予定でしたが、クーデター未遂事件により中断しました。韓国が求めた朝鮮人強制連行の史実明示についても、議論は先送りとなりました。
紀伊山地の霊場と参詣道: 熊野古道の範囲を追加する軽微な変更が申請されましたが、クーデター未遂事件の影響で10月の臨時委員会に持ち越されました。
ICOMOS: 文化遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議（ICOMOS）の制度改革が進められ、推薦国が意見交換できる機会が増え、勧告前に中間報告が出されるようになりました。また、推薦を取り下げた場合や登録延期・情報照会勧告の場合には、ICOMOSの助言を受けられるようになりました。
長崎の教会群: ICOMOSの視察で「教会建築は潜伏信仰の証明に貢献していない」との指摘を受け、名称が「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に変更されました。
茶の生産景観: アジア地域における茶の生産景観の世界遺産としての可能性に関する研究が決定されました。
ル・コルビュジエの建築作品: 国立西洋美術館の前庭の利用方法について検討が求められました。
エルサレム: エルサレムの旧市街とその城壁群の構成資産である神殿の丘の呼称を巡り、アラブ諸国がイスラム教に帰属すると主張し、ユネスコにおいてアラビア語の呼称のみを使用する決議案が採択されました。これに対し、イスラエルが不快感を示し、ユネスコとの協力関係を一時停止しました。
森林保全: 持続可能な開発目標に基づき、世界遺産における森林の保全と管理に関する計画の採用が確認されました。
都市遺産: 持続可能な都市の実現や現代都市を含む都市遺産の制度化を目指すことが確認されました。
奄美・琉球: 2018年の第42回世界遺産委員会での登録審査対象として取り上げられましたが、中国が尖閣諸島問題を理由に反対を主張しました。日本は、奄美・琉球と尖閣諸島は成り立ちが異なるとして反論しました。
* 博物館プログラム: 「世界遺産と博物館プログラム」の推進が決定されました。

パリでの継続会議

イスタンブールでのクーデター未遂事件により中断された世界遺産委員会は、10月24日から26日にかけてパリのユネスコ本部で再開されました。この会議では、登録審査が延期されていた熊野古道の拡張登録が認められました。また、2020年より一回あたりの登録上限を35件に削減することが決定されました。

会議の総括

第40回世界遺産委員会は、クーデター未遂事件による中断という異例の事態に見舞われましたが、新たな世界遺産の登録、危機遺産の追加、そして名称変更など、重要な決定がなされました。同時に、政治的な対立が浮き彫りになった会議でもありました。この会議の結果は、世界遺産リストの更新だけでなく、世界遺産を取り巻くさまざまな課題を浮き彫りにし、今後の世界遺産活動に重要な影響を与えることとなりました。

もう一度検索