第46回世界遺産委員会

第46回世界遺産委員会の詳細

2024年7月21日から31日にかけて、インドのニューデリーで第46回世界遺産委員会が開催されました。この委員会では、新規の世界遺産登録や、既存遺産の保全状況、危機に瀕している遺産の保護について議論が行われました。当初予定されていた会場は新国際会議場ヤショブミでしたが、最終的には国際展示コンベンションセンターのバーラト・マンダパムに変更されました。

新規登録と遺産総数

今回の委員会では、日本が推薦した佐渡島の金山（新潟県佐渡市）を含む、24件（文化遺産19件、自然遺産4件、複合遺産1件）が新たに世界遺産に登録されました。これにより、世界遺産の総数は1223件となりました。

委員国

委員会は、ユネスコ執行委員会のグループ区分に準じた委員国で構成されました。議長国、副議長国は、重要な役割を担いました。

審議対象の推薦物件

2023年2月1日までに推薦書を提出し、書類点検で受理された物件が審議対象となりました。審議は7月26日から29日にかけて行われました。物件名に印が付いているものは、拡大登録や重要な変更を示すものです。また、太字で示された物件は正式に登録が決定しました。

自然遺産

自然遺産に関する審議では、環境保護と持続可能な開発のバランスが重要な焦点となりました。

複合遺産

複合遺産は、文化的な価値と自然的な価値の両方を併せ持つ遺産であり、その保護には特別な配慮が求められます。

文化遺産

文化遺産は、歴史的、芸術的な価値を持つものが多く、その保全には歴史的背景を考慮した対策が必要です。

緊急登録

7月26日には、緊急案件として例外的な新規登録が行われました。これは、パレスチナの聖ヒラリオン修道院を危機遺産として登録する措置でした。

危機遺産

危機遺産の指定に関する協議は7月29日に行われました。多くの遺産が直面する脅威について、深刻な議論が行われました。

緊急案件

2023年パレスチナ・イスラエル戦争により、パレスチナの文化遺産が破壊され、特に聖ヒラリオン修道院は緊急に保護される必要がありました。この修道院は、武力紛争の際の文化財保護に関するハーグ条約に基づき、暫定的に強化された保護が適用されました。

リストへの新規掲載

新規掲載にあたり、事前通達が行われ、関係国に不服申し立ての機会が与えられました。

前年からの持ち越し審議

ストーンヘンジ（イギリス）

ストーンヘンジのトンネル工事に対する懸念が議論され、トンネル深度の変更や通行料の徴収などの対策が評価されましたが、引き続き状況を監視することになりました。

仏陀の生誕地ルンビニ（ネパール）

ルンビニは地震と水害の影響を受けていましたが、緊急の劣化防止措置が評価され、危機遺産指定は免れました。

グレートバリアリーフ（オーストラリア）

グレートバリアリーフは、地球温暖化によるサンゴの白化が深刻化しており、水質汚染対策や漁業制限などの努力が求められています。オーストラリア政府は、土壌流出対策、海洋汚染対策、水産資源保護などの具体的な対策を講じ、ユネスコから一定の評価を得ました。

確認案件

イエメンのサナア旧市街は、フーシ派の占拠と米英軍のミサイル攻撃により被災しており、現状の確認が必要とされました。

懸念の表明

パリのセーヌ河岸（フランス）

セーヌ河岸は水質汚濁や景観問題が懸念されており、改善が求められました。

ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り（ハンガリー）

ブダペストの遺産も、過去の委員会で議論された問題が再燃し、引き続き監視が必要です。

指定解除審査

危機遺産指定物件は、その理由が改善されれば、指定解除の審査を受けることができます。

リストからの除去

特定の遺産は、価値が失われた場合、リストから除去される可能性があります。

名称変更

先住民族の権利に関する国際連合宣言に基づき、現地語での名称が優先されるようになりました。

軽微な変更

遺産に関する軽微な変更も、委員会で承認される必要があります。

保全措置審査

登録遺産の保全措置報告（SOC）が審査され、必要に応じて危機遺産化が検討されます。今回は44件の報告が提出され、日本からは琉球王国のグスク及び関連遺産群が報告しました。

保全措置報告の事例

ストーンヘンジのトンネル建設は、ユネスコから深刻な懸念が表明され、追加措置が求められました。また、エル・ピナカテとアルタル大砂漠の生物圏保護区（メキシコ）は、国境壁の影響やソーラーパネルの設置、難民の居留地化などが問題視されています。さらに、マルタの巨石神殿群は、緩衝地帯内のマンション建設が懸念されています。インドのマナス国立公園は、水力発電ダム建設の影響が議論されました。

気候変動に関する対策

過去の委員会で義務付けられた気候変動対策の報告に加えて、今期からは戦略的環境アセスメント（SEA）や社会的影響評価（SIA）を発展させた環境社会影響評価（ESIA）も導入されることになりました。

その他の議題・話題

議題

ウクライナは、ロシアによる侵攻で破壊された遺産について、責任追及と補償を求めました。世界記念物基金は、気候変動による遺産への危機を報告し、保全費用の拠出を表明しました。また、環境遺産や自然環境権についても議論されました。

委員会の動向

国際鉱業金属協会は、世界遺産周辺での資源開発の停止を表明し、災害と紛争に強い遺産をテーマにした行動スローガンが採択されました。さらに、先住民の人権侵害問題も議論され、ナウルが世界遺産条約に批准しました。2025年の第47回世界遺産委員会は、ブルガリアのソフィアで開催されることが決定しました。

話題

今回の委員会開催地は、直前まで決まらず、異例の事態となりました。また、当初予定されていた会場が変更され、委員会のロゴにはインドの世界遺産ハンピの「石の戦車」が用いられました。サイドイベントでは、ヨーガやアーユルヴェーダが体験できるプログラムが用意され、議長を務めるヴィシャル・V・シャルマは、世界遺産の持続可能な開発について研究を進めることを表明しました。インドは、モイダムスの法的保護のために統一民法典を制定しました。また、ユネスコ・ニューデリー事務所の職員が研修を受け、今委員会と同時期に開催されるパリオリンピックの影響についても議論されました。今回の新規登録審査は、事前の勧告や情報照会案件の改善により、予定より早く終了しました。

脚注

詳細は以下の資料を参照してください。

ICOMOS (2024a)
IUCN (2024a)
World Heritage Centre (2024a)
World Heritage Centre (2019b)

外部リンク

@unesconewdelhi Instagram
* 46th session of the Committee (UNESCO World Heritage Center)

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