第6軍団フェッラタ

第6軍団フェッラタ：カエサル創設の精鋭軍団、その軌跡

第6軍団フェッラタ（Legio VI Ferrata）は、共和政ローマ末期から帝政ローマにかけて活躍したローマ軍団の一つです。その紋章には、創設者であるガイウス・ユリウス・カエサルの印である牡牛が用いられましたが、母狼とロムルス、レムスも紋章として使用されました。

創設と初期の活躍

紀元前52年、カエサルによって創設された第6軍団は、ガリア戦争におけるウェルキンゲトリクスとのアレシアの戦いに参加し、その名を歴史に刻みました。その後、カエサルがルビコン川を渡り、共和政ローマに進軍する際には、その先鋒を務めました。ヒスパニアへと転戦し、紀元前48年のファルサルスの戦いにも参加するなど、カエサルの下で数々の戦功を挙げました。

カエサル暗殺後の動乱

カエサルの暗殺後、第6軍団はマルクス・アエミリウス・レピドゥス、次いでマルクス・アントニウスの指揮下に入り、ピリッピの戦いに従軍しました。その後、ユダヤ属州に駐在し、アントニウスのパルティア戦役にも参加しましたが、遠征は失敗に終わりました。アントニウスがアクティウムの海戦で敗北すると、第6軍団はオクタウィアヌス（後のアウグストゥス）の指揮下に入りました。

帝政ローマ時代

アウグストゥスの下、第6軍団は東方シリアに駐在し、第3軍団ガッリカ、第10軍団フレンシス、第12軍団フルミナタとともにパルティアからの防衛を担いました。紀元20年にはパルティア遠征に参加し、紀元前53年のマルクス・リキニウス・クラッススの敗北によって奪われた軍旗を取り戻すという功績を挙げました。その後、ユダヤ属州に移動し、シリア総督プブリウス・クィンクティリウス・ウァルスの下で反乱を鎮圧しました。58年にはグナエウス・ドミティウス・コルブロの指揮下に入り、対アルメニア戦役に第3軍団ガッリカ、第10軍団フレンシス、第12軍団フルミナタとともに参加し、再び戦功を重ねました。

ユダヤ戦争にも従軍し、ローマ皇帝ネロがウェスパシアヌスをユダヤへ派遣しましたが、戦争遂行中の69年にネロが自殺し、ローマは4人の皇帝自認者を巡る内乱状態に陥りました。その中で第6軍団はウェスパシアヌスを支持し、一部はガイウス・リキニウス・ムキアヌスの下でイタリアに進軍したことが分かっています。帰還後、ユーフラテス川流域に駐在しました。

トラヤヌスの治世にはアルメニアに遠征し、属州としました。ユーフラテス川流域のメソポタミアにも進軍しましたが、次のハドリアヌスの治世には撤退し、ユーフラテス川を国境としました。119年にはアラビア属州に移動し、ここを拠点としてユダヤ属州でのバル・コクバの乱の鎮圧に当たりました。

セウェルス朝時代以降

ペルティナクスの暗殺後、ローマは再び内乱となり、第6軍団はセプティミウス・セウェルスを支持しました。セウェルスは権力闘争に打ち勝ち、ローマ皇帝となりましたが、その中で第6軍団はペスケンニウス・ニゲルとの戦闘で功績を挙げたとされていますが、詳細な内容は不明です。アレクサンデル・セウェルスの治世には、長らくパレスチナ（ユダヤ属州の一部）に駐留していた第6軍団はフェニキアへと移動させられました。これ以降、第6軍団に関する記録は散発的になります。

フィリップス・アラブスの治世には、発行された貨幣によってその存在が確認できますが、時代が下ってサーサーン朝のシャープール1世とのエデッサの戦い（ローマ皇帝ウァレリアヌスが捕虜となった戦い）の記録には、第6軍団の名前は見られませんでした。その後の消息は定かではありません。

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