筏師

筏師（いかだし）

筏師とは、山で伐採した木材を筏に組み上げ、河川を利用して木材を運搬することを生業とする人々を指します。筏夫、筏乗とも呼ばれます。

筏師の歴史

その歴史は古く、12世紀に成立した『金葉和歌集』にもその言葉が見られます。古代・中世においては、畿内の河川交通の要所や木材の生産地の近くに設けられた木津（材木湊）に、権門によって木屋が置かれ、木屋預や木守の下に筏師が組織されていました。特に寺社は、大量の木材を必要としたため、木屋預や筏師を寄人とすることで安定的な木材確保を図りました。木屋預らも寄人身分を得ることで、筏下し以外の河川交通における特権を得ていました。

時代が下るにつれて、良質な木材を求めて生産地が畿内から地方へと広がり、それとともに筏師の活動範囲も拡大しました。しかし、増水期や農繁期には筏下しが制限されたため、江戸時代の寛永年間以降、夏季に筏師が休業する慣習が確立しました。休業期間中には、焼畑などの農業に従事したり、川舟の操作や荷物の運搬などの副業を行っていました。また、筏下しとともに酒樽や板などの荷物を運び、運賃を稼ぐこともありました。

筏師は、仲間同士で「筏師座」と呼ばれる組織を結成し、結束を強めました。また、腰瀧祭のような祭祀を共同で行うなど、信仰面でも繋がりを持っていました。

安土桃山・江戸時代に入ると、権門の保護が失われる一方で、社会の安定とともに木材需要が増大しました。その結果、筏株と呼ばれる営業権が確立され、「筏乗前」と呼ばれる株仲間へと発展しました。近代に入っても、木材需要の高さから筏師の活動は活発でしたが、株仲間の廃止とともに「筏師組合」へと組織を改めました。

しかし、昭和に入るとトラック輸送の発達やダム建設による河道の堰き止めなどによって筏下しが困難となり、戦後には筏師の姿はほとんど見られなくなりました。

現代の筏師

1979年、和歌山県北山村で観光振興を目的とした筏流しが復活しました。2000年代においても継続的に実施されており、現在も数人の筏師が存在します。

関連事項

水運
杣司
材木問屋
吉野水分神社 - 「筏乗の神様」とする伝説があります。

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