箕作秋吉

箕作秋吉（みつくり しゅうきち）

生涯

箕作秋吉は、1895年10月21日に東京で生まれました。父は箕作元八、曾祖父は箕作阮甫という家系に育ちました。彼は、幼少期から音楽の才能を発揮し、後に日本の音楽界を牽引する作曲家、教育者としての道を歩み始めます。

1913年、東京高等師範学校附属中学校（現在の筑波大学附属中学校・高等学校）を卒業。その後、1921年に第一高等学校を経て東京帝国大学工学部応用化学科を卒業しました。大学卒業後、彼は音楽への情熱を捨てきれず、ドイツのベルリンへ留学。ゲオルク・シューマンに和声法を師事する傍ら、カイザー・ヴィルヘルム化学・物理学研究所（現在のマックス・プランク研究所）で物理化学の研究にも従事しました。この留学経験は、彼の音楽観を大きく形成する上で重要な役割を果たしたと考えられます。

1925年に帰国した彼は、海軍技術研究所に勤務しながら、池譲に対位法を、池内友次郎にフーガを、ヨゼフ・ケーニヒに管弦楽法を、ヨーゼフ・ローゼンシュトックに指揮法を師事し、作曲家としての研鑽を積みました。1929年には『国民音楽に就て』を発表し、「日本的和声」を提唱。これは、彼の作曲における重要な転換点となりました。

1930年には新興作曲家連盟を創設し、日本の現代音楽の発展に貢献します。1939年には、大阪帝国大学から理学博士の学位を取得。音楽と科学という二つの分野で優れた才能を発揮しました。1945年には、新興作曲家連盟を日本現代音楽協会に改組し、日本の音楽界の発展に尽力します。

1950年には、彼の作品『芭蕉紀行集』がブリュッセルで開催された第24回国際現代音楽祭で入選を果たし、国際的にも評価されました。1954年には、国際音楽評議会日本委員会書記長に就任し、国際的な音楽交流にも積極的に参加しました。

1971年5月10日、神奈川県茅ヶ崎市の自宅で生涯を閉じました。

作風

箕作秋吉の音楽は、初期にはロマン派の作風の影響を受けましたが、留学中に日本の旋法に基づく「日本的和声」を提唱し、独自のスタイルを確立しました。彼は、日本の伝統的な音楽要素を西洋音楽の技法と融合させ、新しい音楽表現を追求しました。彼の作品は、管弦楽、室内楽、歌曲など多岐にわたり、それぞれのジャンルで独創的な作品を残しています。

主要作品

管弦楽曲:
『二つの舞曲』作品1（1926年）
組曲『亡き子に』作品2（1927年）
『壮んな夏』（1936年）
『二つの詩』作品5（1927/1948年）
『古典小交響曲ニ長調』作品14（1934年）
『ヴァイオリンと管弦楽のためのソナタ』作品15-2（1948年）
『交響曲第1番 ヘ調』作品20（1939年）
『ピアノと室内管弦楽のための小協奏曲』作品27-1
『ピアノ協奏曲』作品27-2
『日本古謡を主題とする管弦楽のための3楽章』
『管弦楽組曲《学校生活》』

ピアノ曲:
『ローマン組曲』作品3（1927年）
『古典組曲』作品4（1927年）
『花に因んだ3つのピアノ曲』作品16（1935/1940年）

歌曲:
『小曲集』作品6（1929年）
『歌曲集《閨秀叙情詩集》』作品7（1937年）
『芭蕉紀行集』作品8（1930-1931/1937年）
『現代詩集 第一集 四季篇』作品9（1931年）
『現代詩集 第二集 動物篇』作品10（1932年）
『現代詩集 第三集』作品11（1933-1935年）
『逝ける人に』作品12
『啄木短歌集』作品13（1934-1936年）
『三つの悲歌』作品17（1943年）
『現代詩集 第四集』
『現代詩集 第五集』

合唱曲
『三つの歌』作品18（1945-1946年）
『働く人のために』作品19（1947年）

その他
『ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ヘ長調』作品15-1（1935年）
『六つの農作業歌』
『挽歌』（聶耳の霊に捧ぐ）
『お月さま』
『叱られ坊主』

作曲校歌（横須賀市立浦賀小学校、上越市立城北中学校、茅ヶ崎市立第一中学校、平塚市立旭小学校、秩父市立影森中学校、日本大学藤沢高等学校、横浜高等学校、甲府市立甲府商業高等学校、新潟大学学生歌、旭硝子社歌）

参考文献

箕作秋吉『音楽の時』村松書店、1948年、152-158 (作品表)頁。
箕作秋吉『煙粒子の荷電に関する実験』（理学博士論文）大阪帝国大学、1939年。

関連人物

箕作元八（父）
箕作阮甫（曾祖父）
ゲオルク・シューマン（和声法の師）
池譲（対位法の師）
池内友次郎（フーガの師）
ヨゼフ・ケーニヒ（管弦楽法の師）
ヨーゼフ・ローゼンシュトック（指揮法の師）

外部リンク

箕作秋吉 - ピティナ・ピアノ曲事典
箕作秋吉 - Musica Bella
箕作阮甫とその子孫

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