籾山梓月

籾山梓月（もみやま しげつ）

籾山梓月（1878年1月10日 - 1958年4月28日）は、明治から昭和にかけての俳人で、本名を吉村仁三郎と言います。庭後、江戸庵などの俳号を持ち、茶人としては宗仁と名乗りました。彼は俳句総合雑誌の草分けである『俳諧雑誌』を創刊・主宰し、俳壇に大きな足跡を残しました。

生い立ちと青年期

東京府日本橋区呉服町で、代々飛脚屋と両替屋を営む吉村家の長男として生まれました。父は陸運元會社を設立し、これは現在の日本通運の前身にあたります。幼い頃から漢籍を学び、和歌や文章に親しむ一方で、15歳で布川照庵に師事して俳諧を学び始めました。慶應義塾大学部では理財科を卒業しています。俳諧は初め舊派を学びましたが、後に高浜虚子、正岡子規に師事し、俳諧の世界を深く探求しました。

籾山書店と『俳諧雑誌』

その後、籾山家の婿養子となり、籾山庭後と名乗るようになります。1905年には高浜虚子から俳書堂を譲り受け、「籾山書店」を経営します。ここでは、内藤鳴雪や河東碧梧桐といった俳人の著作だけでなく、森鷗外、夏目漱石、谷崎潤一郎など、後の文豪たちの初期の作品も出版し、文芸界に貢献しました。

1910年には永井荷風と出会い、彼の雑誌『三田文学』の販売を担うことになります。その後、荷風と共に雑誌『文明』を創刊しますが、編集方針の違いから短期間で休刊となりました。その後、満を持して創刊したのが俳句総合誌『俳諧雑誌』です。この雑誌は、内藤鳴雪、原月舟、前田普羅、飯田蛇笏、久保田万太郎、永井荷風など、錚々たるメンバーが執筆し、井上啞々が編集を担当しました。『俳諧雑誌』は、当時の俳句界で新傾向の『ホトトギス』と並び称される存在でした。

晩年と人物

『俳諧雑誌』が1930年に休刊した後、籾山梓月は後進の育成に力を注ぎました。晩年は庭後隠士と号し、日本の戦後の変化を憂い、隠居生活を送りました。

永井荷風は、籾山梓月のことを「言語態度の非常に礼儀正しく沈着温和上品」と評しており、その人柄が偲ばれます。また、荷風の主治医であった大石貞夫を紹介するなど、親交が深かったことが伺えます。

著書

『南新二軽妙集』
『連句入門』
『連句作例』
『株式売買』
『イソップ唱歌』
『遅日』
『俳句のすすめ』
『江戸庵句集』
『俳諧古典集』
『芭蕉書簡集』
『鎌倉日記・伊香保日記』
『浅草川』
『紅潤集』
『夏七句』
『冬鶯』
『古反古』
* 『冬扇』

籾山梓月は、俳人、出版人として、日本の文芸史にその名を刻んでいます。

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