糀場富美子

糀場富美子について

糀場富美子（こうじば とみこ）は、1952年7月11日生まれの日本の作曲家、編曲家です。広島県広島市南区で生まれ、3歳からピアノを始め、小学校1年生から戸田繁子の音楽教室で音楽の基礎を学びました。同門には指揮者の大植英次がいます。戸田の指導のもと、ソルフェージュ、即興演奏、和声学の基礎を習得しました。広島大学附属高等学校を卒業後、東京芸術大学作曲科に進学しました。大学3年時に初めて作曲した管弦楽曲が芸大オーケストラによって演奏されたことをきっかけに、作曲家の道を志すようになりました。大学卒業後、同大学院を修了し、矢代秋雄、間宮芳生、野田暉行らに師事しました。

作風と主な作品

広島で被爆の惨状を聞いて育った経験から、平和への思いを込めた作品を多く発表しています。代表作の一つである弦楽のための「広島レクイエム」は、大学院修了直後の1979年に作曲され、翌年に広島市に寄贈されました。1985年には、バーンスタインの推薦により、大植英次指揮で「広島平和コンサート」にて初演されました。その後、小澤征爾指揮のボストン交響楽団の定期演奏会でも演奏されるなど、国内外で高い評価を得ています。1995年には、サンタフェ室内楽音楽祭でコンポーザー・イン・レジデンスを務め、自身の作品がフェスティバル・アンサンブルやミネソタ管弦楽団によって演奏されました。

また、広島と長崎の悲劇を風化させないという強い思いで作曲された『未風化の七つの横顔～ピアノとオーケストラのために』は、2006年に別宮賞と芥川作曲賞を受賞しました。この作品は、平和への願いを込めた彼女の代表作の一つとして知られています。

2011年の東日本大震災以降は、「海」をテーマにした作品を多く作曲しています。主な作品として、2014年ミュージック・フロム・ジャパン委嘱の「わだつみ」（チェロとピアノ、後に管弦楽版も制作）、會田瑞樹委嘱の「ねむりの海へ」（ヴィブラフォン）などがあります。これらの作品には、自然の雄大さや生命の尊さを表現しようとする彼女の意図が込められています。

その他の活動

糀場富美子は、作曲家としての活動だけでなく、後進の育成にも力を注いでいます。2005年4月より日本ピアノ指導者協会評議員、2006年4月より日本現代音楽協会理事、2006年12月より日本ソルフェージュ協議会理事を務めています。また、日本作曲家協議会会員、21世紀音楽の会会員でもあります。現在、東京音楽大学教授、東京芸術大学非常勤講師として、次世代の音楽家たちの指導にあたっています。日本アマチュアピアノコンクールやピティナ・ピアノコンペティションなどのコンサートの審査員も務めています。

主要な作品

糀場富美子の作品は多岐にわたりますが、主要な作品には以下のようなものがあります。

管弦楽作品:
「佳運-尺八とオーケストラのために」
「光る橋-オーケストラのために-」
「未風化の7つの横顔」（ピアノとオーケストラ）
「フォオトリエの鳥-クラリネットとオーケストラのために-」
「輪廻-そして、魂の新生のとき-」
「月を食う空の獅子」
「Sky was sky」
「百舌鳥耳原に寄せる３つの墓碑銘」
「摂氏4000度からの未来」

室内楽作品:
「広島レクイエム」（弦楽合奏）
「そして、魂の新生のとき Transmigration of the soul」
「ぽるとがるぶみ－メゾソプラノと打楽器のために」
「アウラ-尺八とコントラバスのために-」
「この明け方に-弦楽アンサンブルのために-」
「Paracelsusの部屋-フルートと打楽器のために-」
「ステラ・ウィンド(ピアノ四手連弾)」
「天頼譜Ⅱ-十七絃と電子オルガンのために-」
「わだつみ」（チェロとピアノ）
「イザイホー～ノロのうた～」（Vn、Hp）
「フラグメンツ　3本のチェロのための」

独奏曲:
「ピアノ独奏曲」
「黒白まだらのワルツ-子供のためのピアノ曲-」
「ルブリョフの扉-独奏ヴァイオリンのために-」
「美しき謀計の織り手-チェンバロのために-」
「かえるの体操（子供のためのピアノ協奏曲）」
「ドゥイノの城」（チェロ独奏）
「ルブリョフの扉」（ヴァイオリン独奏）
「ねむりの海へ　ヴィブラフォン独奏のために」
「お日さまのキャンバス」（ピアノ独奏）
「白のエピソード」（ピアノ独奏）

合唱曲・独唱曲:
「児童合唱組曲 四季と歌と子どもたち」
「四季の情景 : ソプラノと女声合唱のために」
「合唱のための５つのバラード-蒼い海と空のきわみに-」
「女声及び児童合唱曲」
同声2重合唱による組曲「あかちゃんのうた」全10曲
「竹笛（ソプラノ独唱曲）」
「生命の種まき」
「星曜日・風曜日　女声合唱のために」

楽譜・録音・著書

糀場富美子の作品は、楽譜も多数出版されています。また、自身の作品集の録音も発表しています。著書には、音楽理論や聴音に関するものがあり、教育分野にも貢献しています。

受賞歴

1977年：神奈川芸術祭合唱コンクール最高位
1986年：第6回新・波の会日本歌曲コンクール作曲部門入賞
* 2006年：別宮賞、芥川作曲賞


彼女の作品は、平和への祈りや自然への畏敬の念が込められており、多くの人々の心に響いています。今後も、作曲家、教育者として、その活躍が期待されます。

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