糟屋武則

糟屋武則（かすや たけのり）

糟屋武則は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将・大名であり、賤ヶ岳の七本槍の一人として知られています。その生涯は、戦国時代末期から江戸時代初期という激動の時代を反映しており、多くの戦で武功を上げました。

生涯

出自

糟屋氏は、播磨国加古川城を拠点とする鎌倉時代からの武家で、戦国時代には別所氏の家臣でした。武則の出自には諸説あります。

一般的な説では、武則は永禄5年（1562年）に播磨の志村氏の子として生まれたとされます。母は小寺政職の妹で、糟屋朝貞と結婚後に離縁し、志村氏と再婚して武則を産みました。その後、志村氏と死別したため、武則は異母兄の糟屋朝正に養育されたとされています。武則は朝正への恩義から、志村姓を捨てて加須屋（糟屋）を名乗るようになったと伝えられています。

一方、異説では、武則は粕谷則頼の次男であったともされています。また、『寛政重修諸家譜』では、武則は糟屋忠安の四男である数政であると記されていますが、この説は年代や出自が異なるため、信憑性は低いとされています。

大名への立身

天正5年（1577年）、羽柴秀吉の播磨攻めの際、加古川城主であった武則は、小寺孝高の説得により、秀吉軍に降伏しました。その後、孝高の推薦により秀吉の小姓頭となり、三木合戦に参戦。野口城の攻略が武則の初陣となりました。三木城攻防戦では、箕谷ノ上付城を守り、包囲網の一翼を担いました。

天正7年（1579年）に異母兄の朝正が戦死したため、天正8年（1580年）に武則が家督を相続しました。その後も中国戦役に従軍し、本能寺の変の際には秀吉の中国大返しに従い、山崎の戦いに参加しました。織田信長の葬儀にも陪臣として参列しています。

天正11年（1583年）、賤ヶ岳の戦いにおいて、武則は「金の角取紙のエヅルの指物」を付けて奮戦し、佐久間盛政配下の宿屋七左衛門を討ち取るという武功を上げました。この功績により、福島正則や加藤清正らと共に賤ヶ岳の七本槍に数えられ、一番槍の賞詞を受け、3,000石余を拝領しました。

小牧・長久手の戦いでは、馬廻衆として本陣を守備。方広寺大仏の作事奉行や九州征伐にも従軍しました。また、博多での城普請にも携わる予定でしたが、実際には築城は行われませんでした。

天正19年（1591年）には近江国検地奉行となり、増田長盛らと共に検地を実施。秀吉の蔵入地の代官も務めました。文禄元年（1592年）の文禄の役では、目付として朝鮮に渡海し、占領地の代官などを務めました。晋州城攻防戦にも参加しています。

文禄4年（1595年）に豊臣秀次が失脚すると、伏見の武則の屋敷に秀次を軟禁したとされています。その後、賤ヶ岳の戦功を追賞され、6,000石を加増されて加古川城主となり、1万2,000石の大名となりました。

慶長3年（1598年）に秀吉が死去すると、遺物金10枚を拝領しました。

慶長5年（1600年）、関ヶ原の戦いでは、西軍に属して伏見城の戦いに参加。関ヶ原の本戦にも参戦しましたが、西軍が敗れたため改易されました。

晩年

武則の晩年については諸説あり、正確なことはわかっていません。一説には、改易後に許されて旗本として徳川家に仕えたとも、隠居して家名の存続を図ったともいわれています。また、別の説では、武則は文禄年間に死去し、子である宗孝が家督を継ぎ、関ヶ原の戦いで改易された後、大坂夏の陣で戦死したとも伝えられています。

その他

逸話

武則は、黒田孝高から黒田長政の師範を依頼された際、快諾の証として賤ヶ岳で使った槍を贈ろうとしましたが、長政は「槍の師範を取って功を為すなど聞いたことがない」として断りました。これに対し、武則は長政の将来性を高く評価したと伝えられています。

また、奈良県宇陀市の悟真寺は、武則によって再興されたとされており、寄進状が残っています。滋賀県長浜市の長浜城歴史博物館には、武則所用と伝わる大身槍が所蔵されています。

子孫

黒田二十四騎の一人である益田正親の室は、武則の次男の娘とされています。また、武則の子である十左衛門は、父の改易後に加賀藩の前田利長に仕えたとも伝えられています。武則の弟の子である加須屋武成は、会津藩で弓術の流派の祖となり、「天下の三射人」の一人に数えられました。

鳥取藩の池田家にも、武則の一族とされる家系が仕えており、武則が秀吉から拝領したとされる頭巾が伝来しています。また、武則の弟である武政は、大坂夏の陣の後に帰農したとされています。

脚注

注釈

特になし

出典

加古川市『加古川市誌』
糟谷正勝「三、加須屋内膳正」『播磨糟谷家の系譜』
「藤原氏良方流 糟屋」『寛政重脩諸家譜. 第4輯』
高柳光寿; 松平年一『戦国人名辞典』
木村礎; 藤野保; 村上直『藩史大事典 第5巻 近畿編』
多田暢久「賤ヶ岳七本槍の加古川城主・加須屋武則」『家康と播磨の藩主』

関連項目

加古川城
賤ヶ岳の戦い
三木合戦
櫛橋光

関連作品

小説

徳永真一郎「糟屋助右衛門武則」『賤ヶ岳七本槍　秀吉を支えた勇将たちの生涯』

外部リンク

糟屋氏系譜
* 萬昌院功運寺

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