萬昌院功運寺

龍寶山萬昌院功運寺：歴史と著名人の墓所が織りなす物語

東京都中野区上高田に位置する曹洞宗寺院、龍寶山萬昌院功運寺は、その歴史とそこに眠る数多くの著名人の墓所から、深い歴史的意義を持つ寺院です。元々は萬昌院と功運寺という別々の寺院でしたが、1948年に合併して現在の姿となりました。それぞれの寺院の歴史を紐解きながら、この寺院が持つ魅力を探っていきましょう。

萬昌院：今川家ゆかりの寺院

萬昌院は、久寶山を山号とし、天正2年（1574年）の創建と伝えられています。開基は今川義元の三男、今川長得、開山は仏照円鑑禅師です。創建当初は江戸城半蔵門近くにありましたが、その後市谷田町、筑土八幡町（いずれも現在の新宿区）と移転を繰り返し、1914年に現在の地へと移転しました。しかし、1917年には火災により本堂や書院が焼失するという悲しい出来事も経験しています。

今川家ゆかりの寺院として、今川義元の長男である今川氏真も当初はここに葬られていました。また、江戸時代初期には吉良家と深い姻戚関係にあったことから、吉良家の菩提寺も兼ねていました。このことは、後に赤穂事件で大きな意味を持つこととなります。

功運寺：永井家と徳川家との繋がり

功運寺は、竜谷山を山号とし、慶長3年（1598年）に創建されました。開基は徳川秀忠に仕えた老中、永井尚政、開山は黙室芳誾禅師です。創建当初は江戸城桜田門外にありましたが、三田（芝三田功運町）を経て、1922年に現在の地に移転しました。

永井家は徳川家と深い繋がりを持つ家系であり、功運寺はその菩提寺として栄えました。特に、永井尚長の悲劇は、歴史に暗い影を落とします。尚長は増上寺での将軍家法要中に刃傷に遭い殺害されましたが、その加害者である内藤忠勝は浅野長矩の叔父にあたります。この事件は、永井家と浅野家、そして徳川家にも複雑な影を落とすこととなります。

多くの著名人の墓所

萬昌院功運寺には、歴史上の著名人の墓所が多く存在します。その中には、戦国武将の糟屋武則、旗本奴として知られる水野成之、そして赤穂事件で知られる吉良義央の墓も含まれています。吉良義央の墓は、彼の領地であった愛知県西尾市の華蔵寺にも存在します。

さらに、吉良家臣の墓、今川家の墓、永井家の墓、江戸時代の外科医である栗崎家の墓、下野黒羽藩主で国学者であった大関増業の墓、初代歌川豊国の墓、小説家である林芙美子の墓など、多様な分野で活躍した人々の墓がここに集まっています。かつては、江戸時代の町奉行、大岡忠相の墓もありましたが、現在は茅ヶ崎市の浄見寺に移転しています。

寺院と地域社会

萬昌院功運寺は、単なる寺院としてだけでなく、地域社会にも貢献しています。寺院が母体となって運営されている「まこと幼稚園」は、地域の子どもたちの育成に重要な役割を果たしています。

アクセス

中央線各駅停車・大江戸線東中野駅から徒歩12分、地下鉄東西線落合駅から徒歩8分、西武新宿線新井薬師駅から徒歩10分と、交通の便も良好です。

まとめ

龍寶山萬昌院功運寺は、その歴史とそこに眠る多くの著名人の墓所を通して、日本の歴史の一端を垣間見ることができる貴重な場所です。静寂に包まれた境内には、歴史の重みと、人々の営みの痕跡が感じられます。訪れる人々に、静かな癒しと、歴史への深い想いを届ける場所と言えるでしょう。

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