紀伊国分寺

紀伊国分寺とは

紀伊国分寺は、和歌山県紀の川市東国分に位置する新義真言宗の寺院です。山号を八光山、院号を醫王院と称し、薬師如来を本尊としています。この寺は、奈良時代に聖武天皇の命によって日本各地に建立された国分寺の一つ、紀伊国分寺の後継寺院にあたります。本記事では、現存する寺院だけでなく、創建当時の史跡である紀伊国分寺跡と紀伊国分尼寺跡についても詳しく解説します。

概要

紀伊国分寺は、紀の川右岸の段丘上に位置し、本堂は創建時の国分寺の講堂跡に建てられています。創建当時の寺跡は国の史跡として指定され、「史跡紀伊国分寺跡歴史公園」として整備されています。また、隣接して紀の川市歴史民俗資料館があり、地域の歴史を学ぶことができます。

歴史

紀伊国分寺の創建は、聖武天皇の詔によるものとされていますが、詳しい記録は残っていません。『続日本紀』には、天平勝宝8年（756年）に紀伊国を含む26ヶ国の国分寺に法具が頒布されたという記述があります。また、『日本三代実録』には、元慶3年（879年）に「紀伊国金光明寺」が火災で焼失したとありますが、その後すぐに復興したと考えられています。『延喜式』には、紀伊国分寺の維持費として20,000束が記載されています。平安時代後期までは存在が確認されていますが、中世に入ると衰退し、文献への登場はなくなります。

現在の国分寺に関する資料によると、寛永4年（1628年）に無本寺から根来寺の末寺となり、寛延4年（1751年）には藩寺社奉行の直轄下に入ったとされています。浅野氏時代には寺領4石5斗、徳川氏時代には3石2斗が与えられていました。昭和3年（1928年）2月7日には、国の史跡に指定されました。昭和48年（1973年）から昭和50年（1975年）にかけて行われた発掘調査により、寺域が約218メートル四方であることが判明し、伽藍配置や規模が確認されました。昭和60年（1985年）には、国の史跡に追加指定されています。

境内

現在の堂宇は、創建時の国分寺の講堂跡に建てられた本堂のみです。本堂は江戸時代の元禄13年（1700年）に再建されたもので、桁行5間、梁間4間、棟高11.7メートル、本瓦葺入母屋造・重層屋根の構造です。外観は二階建てに見えますが、内部は一階です。平成4年（1992年）に講堂基壇中央の現在地に移築され、紀の川市の文化財に指定されています。

紀伊国分寺跡

寺域は2町四方（約218メートル四方）で、伽藍は南から南門、中門、金堂、講堂、軒廊、僧房が一直線に配置されています。塔は金堂の東前方に、鐘楼と経蔵は金堂の後方に配置されています。中門左右から伸びる回廊は、金堂、塔、鐘楼、経蔵を囲み、講堂に接続していました。寺の東側は雑舎として使用されていたと考えられています。塔は七重塔と推測され、一辺16.4メートルの瓦積基壇上に緑泥片岩製の心礎をはじめ、全ての礎石が当時のまま残っています。

紀伊国分尼寺

尼寺の正確な所在地や経緯は不明です。一説には、僧寺の西方約800メートルにある西国分廃寺跡（岩出市西国分）が尼寺であるとされています。この廃寺には塔心礎のみが残っており、「西国分塔跡」として国の史跡に指定されています。調査の結果、塔の規模が明らかになり、白鳳時代から奈良時代の寺跡であることが判明しています。尼寺説では、この寺院が天平期に尼寺に転用されたと考えられています。

文化財

国の史跡
紀伊国分寺跡：昭和3年2月7日指定
紀の川市指定有形文化財
本堂

現地情報

所在地
国分寺（旧・現）：和歌山県紀の川市東国分682
西国分塔跡（推定国分尼寺跡）：和歌山県岩出市西国分
関係施設
紀の川市歴史民俗資料館

周辺

府守神社：付近には紀伊国府跡があったと推定されています。
最上廃寺跡

脚注

各所説明板
『史跡 紀伊国分寺跡』（紀の川市教育委員会）
『日本歴史地名体系 和歌山県の地名』（平凡社）那賀郡 国分寺項・西国分廃寺跡項

外部リンク

紀伊国分寺 - 文化遺産オンライン（文化庁）
西国分塔跡 - 文化遺産オンライン（文化庁）
* 紀伊国分寺跡 - 和歌山県広報課「和歌山県フォト博物館」

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