紀男人

紀男人の生涯と業績

紀男人（きの おひと）は、飛鳥時代から奈良時代にかけて活躍した貴族であり、文人の一人としても名を馳せました。彼の本名は雄人とも知られており、父は大納言の紀麻呂です。官位においては正四位下・右大弁を歴任し、さまざまな重要な役職を担いました。彼の業績と背景について詳述します。

経歴

紀男人は慶雲2年（705年）に従六位下から始まり、四次にわたって昇進しました。慶雲4年（707年）には文武天皇の大葬に際して造御竈司の職務に携わり、和銅4年（711年）には兵庫将軍として任命され、平城宮の造営のために多くの役民が逃げる中、兵庫を防衛しました。この時期に彼は次第に地位を上げ、和銅5年（712年）には従五位上に昇進します。

霊亀3年（717年）には正五位下に、養老2年（718年）には正五位上、養老7年（723年）には従四位下という具合に、元正朝では順調に出世を続けました。この間の養老5年（721年）は特に一際重要な時期で、彼は佐為王や山上憶良といった著名な文人と共に、皇子への学芸教育に従事するよう命じられました。

聖武天皇の治世においても、紀男人は昇進を続け、天平3年（731年）に従四位上、天平8年（736年）に正四位下にまで到達しました。つまり、彼は大宰大弐や右大弁といった重要なポジションを歴任しましたが、天平10年（738年）には九州で生涯を閉じました。享年57歳で、彼の遺骨は音博士の山背靺鞨によって平城京に運ばれました。

文人としての業績

紀男人は詩的才能にも恵まれ、天平2年（730年）に詠んだ和歌が『万葉集』に収められています。特に、彼が大宰帥であった大伴旅人の邸宅で開催された梅花の宴での作が有名です。また、彼の漢詩も『懐風藻』に3首が採録されており、文人としての地位を確立しました。

官歴

紀男人の官歴は以下の通りです。

• - 時期不詳：従六位下
• - 慶雲2年（705年） 12月27日：従五位下
• - 慶雲4年（707年） 10月3日：造御竈司
• - 和銅4年（711年） 9月4日：兵庫将軍
• - 和銅5年（712年） 正月19日：従五位上
• - 霊亀3年（717年） 正月4日：正五位下
• - 養老2年（718年） 正月5日：正五位上
• - 養老7年（723年） 正月10日：従四位下
• - 天平2年（730年） 春：大宰大弐
• - 天平3年（731年） 正月27日：従四位上
• - 天平8年（736年） 正月21日：正四位下
• - 天平9年（737年） 7月25日：見右大弁
• - 天平10年（738年） 10月30日：卒去（大宰大弐正四位下）

家族

紀男人の父は紀麻呂であり、母については記録が残されていません。彼には子供が数人おり、男子には紀家守（725-784）、紀兼貞、紀家継がいます。彼の家系は後世にわたって影響を及ぼしました。

結論

紀男人はその生涯を通じて官位昇進や文人としての業績を通じて奈良時代の貴族社会に重要な役割を果たした人物です。彼の詩や和歌は後の時代にも影響を与え、歴史的にも価値のある遺産となっています。

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