美々津

美々津（みみつ）

美々津は、宮崎県日向市の南部に位置する地域で、旧美々津町の中心部にあたります。地域内には、宮の下、高松、落鹿など、複数の集落が含まれています。

概要

美々津は、耳川河口に位置する港町として発展しました。江戸時代には高鍋藩の重要な交易港として、上方との交易で賑わいました。明治時代から大正時代にかけては、周辺地域からの物資の集積地となり、港を中心に繁栄しました。

その名残として、当時の建物や敷地割が今も残っています。瀬戸内海からの船運の西端にあたるこの地には、上方風の商家や、操船・水運業者の家、漁家などが建ち並び、独特の景観を形成しています。これらの歴史的な街並みが評価され、美々津は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。また、「美々津の歴史的街並」は、手づくり郷土賞（人と風土が育てた家並）や同賞大賞を受賞しており、その文化的価値が広く認められています。

歴史

美々津は、古くから港として栄え、室町時代には日明貿易の港としても利用されていたことが知られています。1740年には、中国の洪武帝時代に作られた銭貨が発見されており、当時から国際的な交易が行われていたことを示唆しています。

戦国・安土桃山・江戸時代

戦国時代には、耳川の戦いによって神社仏閣が焼失するという被害を受けました。江戸時代には高鍋藩の商業港として、内陸から耳川を経由して運ばれた木材などの積替え港として発展しました。1690年には、山陰・坪谷村一揆の際に、延岡藩と高鍋藩の交渉が行われた場所でもあります。また、1687年、1705年、1729年、1758年には大火が発生し、多くの家屋が焼失する被害に見舞われています。

明治維新後

明治維新後の短期間には、美々津県庁が置かれました。西南戦争中には、周辺地域が激戦地となり、廻船問屋の商人が政府軍のスパイとして活動したという記録も残っています。

1889年には町村制施行により美々津村が発足し、1898年には町制を施行して美々津町となりました。1921年には鉄道（日豊本線）が開通し、美々津駅が開業。1934年には国道3号線（現国道10号）が開通し、交通の便が向上しました。

第二次世界大戦後から現代

1955年、美々津町は日向市に編入されました。その後、農協の合併や、日向市役所の支所設置、ゴルフ場のオープンなど、様々な変化を経験しました。1967年には国道10号の美々津大橋が開通し、1970年代にはリニアモーターカーの実験線が建設され、世界記録を達成するなど、技術開発の拠点としても注目を集めました。

1986年には、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、歴史的な街並みが保護されるようになりました。リニア実験線は山梨県に移設されましたが、その後もエアロトレインの実験が行われるなど、先端技術の研究開発も継続されています。

東征伝説

美々津は、神武天皇が東征に出発した地であるという伝説が残っています。ただし、記紀には美々津に関する具体的な記述はありません。伝承によれば、神武天皇は旧暦8月1日に出発したとされ、この日に「起きよ祭り」が開催されます。また、出航の際に時間がなかったため、立ったまま着物のほつれを縫わせたことから「立縫いの里」と呼ばれるようになったという伝承があります。

立磐神社には、神武天皇が腰掛けたとされる「神武天皇御腰掛磐」があり、神武天皇と航海神を祀っています。

紀元2600年記念

1940年には、紀元2600年記念行事の一環として、神武東征の航跡を辿る航海が行われ、美々津から大阪まで船で移動し、橿原神宮に神楯が奉献されました。1942年には、「日本海軍発祥之地」碑と両爪錨の像が建立されました。碑文は当時の総理大臣であった米内光政の筆によるものですが、戦後、一部が連合国軍によって破壊され、その後修復されています。

交通

美々津には、港湾、鉄道、バス、道路といった交通手段があります。美々津港は地方港湾であり、日豊本線には美々津駅があります。地域内を巡回するバスも運行されており、国道10号や複数の県道が通過しています。

施設

地域内には、日向市役所の支所、歴史民俗資料館、郵便局、小学校、中学校、駐在所などの公共施設があります。また、日本ハムや日本ホワイトファームの工場も立地しています。

重要伝統的建造物群保存地区

美々津の歴史的な街並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区として保護されています。この地区は、幕末から明治・大正期にかけて廻船業で栄えた港町であり、主道路と防火路が設けられ、様々な様式の建物が混在しています。その面積は9万2000平方メートルに及びます。

美々津は、その歴史と文化、美しい街並み、そして先端技術の拠点としての側面を併せ持つ、魅力的な地域です。

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