美川陽一郎

美川陽一郎：老け役の名優、その生涯と作品

美川陽一郎（1918年3月2日 - 1976年6月2日）は、日本の俳優である。本名は三川義一。東京生まれ。世田谷中学卒業後、17歳で榎本健一の付き人となり芸能界入り。1937年、新国劇に入団し、持ち前の演技力で老け役を確立。

新国劇から映画、そしてテレビへ

新国劇では、『白野弁十郎』や『大菩薩峠』などに出演し、高い評価を得た。戦後、映画『次郎長三国志』の次郎長役に抜擢されるも、小林一三の意向で小堀明男に役が変更されたことから、端役を演じることとなった。この経験を経て日活に移籍。芸名を「美川洋一郎」から「美川陽一郎」に改め、数々の作品で老け役を演じ続けた。

転機は1963年、TBSの刑事ドラマ『七人の刑事』へのレギュラー出演である。ベテラン刑事・小西役として注目を集め、以降、多くのテレビドラマで脇役として活躍。その温厚で善良な老人の演技は、視聴者から絶大な支持を得た。時代劇では、切られ役を演じることも多かったが、一度だけ黒幕的な悪役を演じたこともあったという。

テレビ時代劇での活躍と晩年

『仮面ライダー』や『ミラーマン』など特撮作品にも出演し、誘拐される博士役などを演じた。また、『太陽にほえろ!』では、石塚誠（竜雷太）が七曲署に転属する前の署の同僚役を演じたこともあった。『遠山の金さん』や『必殺仕業人』にもレギュラー出演し、晩年まで精力的に活動を続けたが、1976年6月2日、肺炎のため58歳で急逝。同時期に出演していた『遠山の金さん』と『必殺仕業人』が遺作となった。

美川陽一郎は老け役をこよなく愛し、実年齢より老けて見えることを演技力の証と捉えていた。特に、善良な老人役を好んで演じ、その演技には定評があった。晩年は、杉良太郎や鳳啓助・京唄子らの舞台にも出演するなど、幅広く活躍していた。また、自身も初老の警官を主人公にしたドラマを企画しており、もし病気を患わなければ実現していたかもしれない。

私生活と愛車

プライベートでは、宝塚歌劇団出身の對馬衣津美と結婚し、2人の息子をもうけた。世田谷区三軒茶屋に本籍を置いており、何度か転居するも世田谷区を離れることはなかった。運転は苦手だったため、妻が撮影現場への送迎をしていたという。見栄っ張りな一面もあり、当時日本に数台しかなかったイギリスのバンデンプラス・プリンセスを愛車としていた。

主な出演作品

映画:『次郎長三国志』、『俺は犯人じゃない』、『死の十字路』、『肉体の反乱』、『黒い雪』、『女は復讐する』、『七人の刑事 終着駅の女』、『玄海遊侠伝 破れかぶれ』、『高校生心中 純愛』、『狐のくれた赤ん坊』など多数

テレビ:『鉄人28号』、『七人の刑事』、『隠密剣士』、『風雪』、『特別機動捜査隊』、『青春とはなんだ』、『ライオン奥様劇場』、『おはなはん』、『東京警備指令 ザ・ガードマン』、『銭形平次』、『東京バイパス指令』、『東芝日曜劇場』、『新・日本剣客伝』、『あゝ忠臣蔵』、『炎の青春』、『部長刑事』、『右門捕物帖』、『徳川おんな絵巻』、『旗本退屈男』、『日本怪談劇場』、『剣豪』、『ナショナルゴールデン劇場』、『大忠臣蔵』、『仮面ライダー』、『ミラーマン』、『軍兵衛目安箱』、『天皇の世紀』、『弥次喜多隠密道中』、『すいーとぽてと』、『水戸黄門』、『笹沢佐保 峠シリーズ』、『大岡越前』、『必殺シリーズ』、『変身忍者 嵐』、『非情のライセンス』、『つぶやき岩の秘密』、『大江戸捜査網』、『太陽にほえろ!』、『隠密剣士 突っ走れ!』、『ぶらり信兵衛 道場破り』、『編笠十兵衛』、『遠山の金さん』など多数。

美川陽一郎は、数々の作品を通じて、老け役のスペシャリストとして、日本のドラマ史に大きな足跡を残した俳優と言えるだろう。その温かい人柄と確かな演技力は、多くの視聴者の心に深く刻まれている。

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