義俊

義俊（ぎしゅん）

義俊は、永正10年（1513年）頃に生まれたとされる戦国時代の僧であり、連歌師としても名高い人物です。大覚寺の門跡として、「大覚寺義俊」とも呼ばれていました。父は関白の近衛尚通であり、兄には近衛稙家や聖護院門跡道増、妹には将軍足利義晴の正室で義輝・義昭の母である慶寿院がいます。

生涯

義俊は、近衛尚通の子として生まれました。生年については、永正元年（1504年）説と永正10年（1513年）5月8日説の二つがあります。永正13年（1516年）に得度し、大覚寺門主・性守の弟子となりました。

享禄2年（1529年）には大覚寺門跡に就任。その翌年の享禄3年（1530年）には、盗賊が押し入り性守が殺害されるという事件が起きました。大覚寺は、この前後の時期に、大永8年（1528年）に幕府による殿社没収、柳本賢治の兵による堂舎破却、天文5年（1536年）には木沢長政勢による放火といった災難に見舞われています。

義俊は、天文7年（1538年）に僧正に任じられ、翌天文8年（1539年）には大僧正と准三后に任じられました。天文17年（1548年）には大元別当職を競望し、天文20年（1551年）には四天王寺の別当職も兼任しています。

将軍家外戚としての活動

天文3年（1534年）に妹（慶寿院）が将軍・足利義晴に嫁ぐと、近衛家は外戚として幕政を支える立場となり、義俊は幕府と大名間の取次ぎ役などを担いました。天文6年（1537年）頃には、義晴の意を受け、越前の朝倉孝景やその家臣に書状を送るなど、義晴と朝倉氏の交渉を仲介しました。また、加賀一向一揆の影響で越前と加賀間の通行が制限された際も、本願寺や朝倉氏との通路開放交渉に携わりました。天文8年（1539年）には、義晴の命で越前に下向し灌頂を行っています。

朝倉家との関係以外にも、天文10年（1541年）には仁木長家の左京大夫任官を幕府に求め、天文14年（1545年）には相良義滋が義晴の一字を拝領するのに尽力しました。天文15年（1546年）には、細川晴元と細川氏綱の争いの中で、義晴が氏綱と連携を図る際、義俊がその仲介を行いました。天文19年（1550年）には、長尾景虎（上杉謙信）の白傘袋・毛氈鞍覆の免許に際して仲介役を務め、義晴没後の天文21年（1552年）には景虎の弾正少弼任官にも貢献し、銅銭1,000疋の御礼を受け取りました。永禄3年（1560年）には、大友義鎮の左衛門督任官交渉にも関与しています。

義俊は、武家伝奏の再任を巡る朝廷と将軍との間の折衝も担い、幕府内部での裁定にも関わりました。永禄3年（1560年）と4年（1561年）に起きた浄土真宗高田派の内部対立では、一方の堯慧派を支持し、もう一方の真智派を大館晴光が支援しました。結果として堯慧派が勝利したことは、近衛一族の義俊の影響力が、義晴以来の重臣である大館晴光を上回っていたことを示唆しています。

また、義俊は近衛家と将軍家の密接な関係から、天文18年（1549年）に足利義晴・義輝父子が三好長慶に追われ近江国坂本に逃れた際、兄弟の近衛稙家や聖護院道増らとともにそれに付き従いました。

戦乱・政変と晩年

永禄5年（1562年）、幕府と結びつく三好長慶と河内守護・畠山高政の間で合戦が起こると、義俊は越前に向かうため近江国坂本に逃れたとされます。この際、義俊は畠山氏に味方していたとの説もありますが、その後の地位に変化がないことから、畠山氏と連携していなかった可能性も指摘されています。

越前に移った義俊は、同年7月には一乗谷に滞在し、朝倉義景から饗応を受けています。その後、敦賀へ移りました。永禄7年（1564年）までには上洛し、兄・稙家の子である義性が大覚寺の新門主となっています。晩年には嵯峨北山に称念寺を営み、自身も称念寺と号しました。

義俊は、永禄7年（1564年）には、将軍・義輝が上杉輝虎（謙信）と北条氏康の和睦を斡旋した際、義輝の意向を現地に伝えました。永禄8年（1565年）に義輝が三好氏によって殺害された際には、義輝の弟である覚慶（後の足利義昭）の擁立を図り、上杉輝虎らに上洛を働きかけました。同年秋には、丹波の薬師寺氏らと連携して三好氏と戦いました。覚慶が近江国矢島に移った後も、上杉氏と北条氏の和睦調停を進め、上杉氏の上洛実現に向けて活動しました。

永禄10年（1567年）1月12日、義俊は越前国敦賀にて亡くなりました。

人物

義俊は和歌や連歌を愛し、『源氏物語』を愛読していました。享禄2年（1529年）には大覚寺で連歌会を催し、天文24年（1555年）には石山寺で三条西公条らと千句連歌を行いました。その後も、大覚寺での千句や何船百韻などの連歌会に積極的に参加しました。

義俊は、戦国時代の動乱の中で、僧侶としてだけでなく、政治的な役割も果たした多才な人物でした。

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