柳本賢治

柳本賢治（やなぎもと かたはる/やないもと かたはる）

柳本賢治は、戦国時代の武将です。

生涯

波多野清秀の子として生まれ、初めは兄・元清の代わりに仙甫寿登に師事し、寿犀・仲霊と号しました。しかし、細川高国の命により13歳で還俗し、山科興正寺の寺侍・岩崎太郎左衛門の養子となります。永正17年（1520年）、柳本長治が嫡男と共に戦死したため、その後継として柳本氏を継ぎました。

細川高国に仕え、摂津国分郡守護・細川尹賢から偏諱を受け、賢治と名乗ります。大永8年（1528年）頃からは、長治と共に戦死した嫡男（実名不詳）の官途名である弾正忠を自らも用いるようになりました。

大永6年（1526年）、細川高国の家臣であった実弟・香西元盛が、細川尹賢の讒言を信じた高国に殺害されると、賢治は兄・波多野元清と共に阿波国の細川晴元・三好元長らと呼応して反乱を起こし、高国の追討軍を神尾山城に籠って撃退しました。翌7年（1527年）には、晴元・元長らと共に高国を打ち破り（桂川原の戦い）、高国や12代将軍・足利義晴を京都から近江国へ追放し、足利義晴の弟・義維を堺に迎え、堺公方として擁立しました。

享禄元年（1528年）には、元長と対立し、晴元に讒言して元長を阿波に追いやり、元長の与党である赤沢幸純や伊丹元扶を攻めるため大和国や摂津に出陣しました。巻き返しを図った高国が、縁戚の伊勢国の北畠氏に上洛を要請し、備前国の浦上村宗を頼り畿内を脅かすと、賢治は義晴との和睦を主張しましたが、義維と晴元に拒絶され、剃髪しました。

享禄3年（1530年）、別所就治の要請に応じ、浦上氏方の依藤氏を攻撃するため播磨国に出陣しましたが、依藤城を攻撃中（依藤城の戦い）、東条谷の玉蓮寺の陣中で浦上村宗の臣・島村貴則の放った刺客により暗殺されました。

賢治の子・虎満丸が幼少であったため、一族の柳本甚次郎がその名代を務めましたが、甚次郎は享禄5年（1532年）1月22日に居城の京都三条城で元長率いる阿波軍に討ち取られました。虎満丸は翌天文2年（1533年）に晴元から代官職の安堵を受けていることが確認できますが、その後については不明です。また、家臣の山村正次は晴元に従い、後の享禄・天文の乱と山科本願寺の戦いに従軍しています。

擬制的一族の創出

賢治は、京都近郊の国人の庶流出身の家臣達に柳本姓を名乗らせ、彼らの家格の上昇を図っていました。後世、明智光秀・豊臣秀吉・徳川家康が家臣に明智姓・羽柴姓・松平姓を名乗らせたのは、名字による家格秩序の形成を目指したものであり、柳本賢治が家臣達に柳本姓を名乗らせたのとは目的が異なると考えられます。柳本姓を名乗った国人には、柳本修理亮（鴫野）春重、柳本若狭守（能勢）治頼、柳本忠兵衛（中井）治安、柳本（中井）源七郎、柳本越中守（富盛）吉久、柳本道秋、柳本新三郎がいました。柳本姓を名乗った武士達は柳本家中の上層部を担っており「年寄衆」と呼ばれていました。しかし、内海久長や木島正家のように、柳本を名乗る武士達と連署する立場にありながらも柳本を名乗らない武士もいました。これは上記のように、柳本姓は家格の低い武士を取り立てる目的で名乗らせていたからであると考えられます。

参考文献

今谷明『戦国 三好一族―天下に号令した戦国大名』洋泉社〈MC新書〉、2007年。
馬部隆弘『戦国期細川権力の研究』吉川弘文館、2018年。ISBN 978-4-642-02950-6。
「「堺公方」期の京都支配と柳本賢治」」 - 初出:『ヒストリア』第247号、2014年。
「細川高国の近習と内衆の再編」 - 初出:『史敏』第13号、2015年。

関連項目

中嶋の戦い
畿内・近国の戦国時代

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