羽尾道雲

羽尾道雲（はねお どううん）

生涯

羽尾道雲は、戦国時代に上野国吾妻郡で勢力を誇った国衆、羽尾氏の武将です。羽尾氏は、吾妻郡の羽根尾城（現在の群馬県長野原町）周辺を拠点としていました。

出自

羽尾氏の出自は、鎌倉時代に海野幸氏が三原荘（吾妻郡西部）の地頭として入部したことに遡ります。戦国時代になると、羽尾氏や湯本氏、鎌原氏といった一族が海野氏の子孫を称し、三原荘で勢力を争いました。羽尾氏は、山内上杉氏に従属する国衆として、北条氏綱による鶴岡八幡宮の造営に奉加しています。

上杉謙信の関東侵攻と羽尾氏

永禄3年（1560年）以降、上杉憲政を擁した長尾景虎（後の上杉謙信）が関東に侵攻を開始すると、羽尾氏も上杉方として行動しました。『関東幕注文』には「羽尾修理亮」という名前が確認できます。この修理亮は、道雲本人とする説と、道雲の嫡子とする説があります。

また、羽尾業幸という人物が、大戸浦野氏の一族に宛てた発給文書が存在します。この業幸は、黒田基樹によって道雲と同一人物とみなされています。この文書から、羽尾氏が当時、大戸浦野氏に対して上位の権力者として振舞っていたことが伺えます。

『加沢記』に基づく事績

『加沢記』によると、永禄3年（1560年）10月、道雲は斎藤憲広、湯本氏、大戸浦野氏と共に武田氏に通じ、吾妻斎藤氏と対立していた鎌原氏の鎌原城を攻撃しました。その後、武田氏は鎌原・羽尾両氏の領土紛争を調停しましたが、道雲は斎藤憲広を通じてこれを拒否。鎌原氏は上野から退去し、道雲は鎌原城を手に入れました。しかし、翌年（1563年）6月、鎌原氏は真田幸綱らの援軍を得て鎌原城を奪還し、さらに羽尾氏の羽根尾城も奪取しました。道雲は所領を失い、信濃高井郷（現在の長野県須坂市）に逃れました。その後、同年9月に斎藤憲広と共に長野原城を攻め落とし、羽尾領を奪回しました。

その後

永禄7年（1564年）に斎藤憲広が武田氏に攻められて没落すると、道雲も吾妻斎藤氏と共に没落したとみられ、以降の動向は不明です。

参考文献

久保田順一『戦国上野国衆辞典』戎光祥出版、2021年
柴辻俊六、平山優、黒田基樹、丸島和洋『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年

もう一度検索