羽金山

羽金山（はがねやま）

羽金山は、福岡県糸島市と佐賀県佐賀市の境界に位置する、脊振山地に属する標高900.23メートルの山です。山頂は佐賀県側にあり、山頂には二等三角点と標準電波送信所があります。登山道や、かつて設置されていたデッカ航法送信所の歴史について詳しく解説します。

山へのアクセス

糸島市街から羽金山山頂へは、白糸の滝を経由する林道を通ります。林道から分岐し、送信所へ続く専用道路が整備されています。この専用道路は、かつて海上保安庁が使用していたもので、「デッカ橋」と名付けられた橋も残っています。専用道路入口にはゲートがあり、一般車両の通行はできません。専用道路脇には登山道があり、脊振山地の稜線を東西に繋ぐ縦走路に合流できます。山域にはツクシショウジョウバカマの群生地が見られます。

山頂の様子

山頂一帯は、はがね山標準電波送信所の敷地となっています。糸島市観光協会もウェブページで紹介していますが、事前に許可を得れば、徒歩で敷地内に入ることが可能です。ただし、工事期間を除く平日昼間に限られ、人数制限や食事禁止などの制限があります。敷地内では指示に従って行動する必要があります。

三角点

山頂には二等三角点が設置されています。基準点名は「羽金山」ではなく、「刃金山」です。位置は北緯33度27分55.4723秒、東経130度10分32.6153秒です。標高は900.23メートルで、佐賀県佐賀市富士町大字上無津呂字中敷4017番地に所在します。柱石長は0.79メートルです。三角点への道のりは、点の記で確認できます。

送信所の歴史

前原デッカ局

羽金山山頂には、昭和後期から平成初期にかけてデッカ航法のための送信所がありました。海上保安庁が管理していた「前原デッカ局」は、高さ153メートルの送信アンテナを有し、1969年5月1日に運用を開始しました。北九州デッカチェーンの主局として、対馬、長島、佐多岬に位置する3つの従局と連携していました。

建設地の選定では、当初、福岡県の鷹取山、福智山、三郡山などが検討されましたが、平坦な山頂が見つからず、羽金山が選ばれました。工事は悪路や天候不順との闘いだったと記録されています。

この地域は落雷が多く、高高度アンテナは雷害を受けやすい状況でした。雷対策として保護ヒューズを導入しましたが、その後も発振器のローディングコイルの交換が必要な雷害が発生しました。後にコイル舎を増設しコイルを二重化しましたが、交換には時間がかかり、冬の道路輸送も困難だったためと考えられます。空中線電力（出力）は当初700ワットに抑制されていましたが、1990年には1.2キロワットに引き上げられました。この電力調整は、隣国との漁業交渉が要因であったと推測されています。

デッカ航法の廃止

GPSの普及によりデッカ航法の必要性が薄れ、海上保安庁は国内6チェーンのうち4つを1993年に廃止しました。しかし、利用者が多かった北九州と北海道の2チェーンは存続し、前原デッカ局を含む北九州デッカチェーンは1999年3月10日に廃止されました。響灘・玄界灘での五智網漁はデッカ航法と相性が良かったため、漁業者は廃止に反対していました。

はがね山標準電波送信所

前原デッカ局の跡地には、はがね山標準電波送信所が建設され、2001年4月1日に運用が開始されました。デッカ局の所在地は、標高が高く開けた土地であること、道路やインフラが整備されていること、デッカ運用で得られた電波伝搬特性のデータが活用できることなどから、標準電波送信所にも適していたのです。同じように、おおたかどや山標準電波送信所も、東北デッカチェーンの従局跡地に設置されています。

羽金山は、その歴史の中で、航法技術の進歩と電波利用の変遷を静かに見守ってきた山と言えるでしょう。

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