翟真

翟真（てき しん）

翟真は、五胡十六国時代に活躍した丁零族の首長であり、翟魏の創始者である翟遼の親族にあたります。彼の生涯は、当時の複雑な政治情勢と、五胡と呼ばれる異民族たちが興亡を繰り返した激動の時代を反映しています。

生涯

384年、翟真は、叔父にあたる翟斌が後燕の慕容垂によって殺害されたことを受け、一族を率いて後燕からの自立を目指します。邯鄲に拠点を置き、前秦の苻丕と連携して後燕に対抗しようと試みました。しかし、後燕の太子である慕容宝や、名将として知られる慕容隆の軍勢に破れ、邯鄲へと撤退します。

その後も、翟真は勢力拡大のために各地を転戦します。公孫希や宋敞といった人物と協力関係を築き、前秦からも支援を受けながら、後燕に対抗する姿勢を崩しませんでした。しかし、後燕軍の勢いは衰えず、慕容隆らの活躍によって、翟真側の勢力は徐々に弱体化していきます。

また、内部においても混乱が生じます。独孤部の劉庫仁が前秦を支援するために兵を起こしますが、配下の裏切りによって殺害され、その勢力は瓦解します。公孫希も翟真のもとに逃れるなど、翟真の周囲の状況は厳しさを増していきます。

385年4月、翟真は承営から行唐へと拠点を移しますが、司馬であった鮮于乞の裏切りによって、翟真自身もろとも一族の多くが殺害されるという悲劇的な最期を迎えます。鮮于乞はその後、自ら趙王を称しましたが、翟真の死は、丁零族の勢力争いに大きな影響を与えました。

翟真の生涯は短く、目覚ましい成功を収めたとは言えませんが、彼の行動は、五胡十六国時代の民族間の対立や、権力闘争の激しさを物語る上で重要な役割を果たしています。翟真が率いた丁零族は、後に翟遼によって翟魏を建国し、一時的に勢力を拡大しますが、最終的には他の勢力に吸収され、歴史の表舞台から姿を消すことになります。

参考文献

『晋書』載記第二十三
『資治通鑑』卷第一百五、卷第一百六

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