翟遼

翟遼（てき りょう）

翟遼（生年不詳 - 391年）は、五胡十六国時代の丁零族の首長であり、翟魏を建国した初代天王（在位：388年 - 391年）です。彼の出自については、『資治通鑑』では翟真の従兄、『晋書』では翟真の子とされています。

生涯

翟遼は、翟斌（330年 - 384年）から続く、後燕から独立した丁零族の勢力を受け継ぎました。その生涯は、独立勢力の維持と拡大、そして周辺勢力との衝突に彩られています。

建国前

384年11月、翟遼は信都の西で後燕の慕容農に魯口で撃破され、無極に退いて駐屯しました。慕容農は藁城に駐屯し、翟遼を圧迫しました。同年12月には、後燕の慕容麟と慕容農による襲撃を受け大敗、翟遼は単騎で翟真の元へ逃れました。

385年4月、翟真が承営から行唐へ移ると、翟真の司馬である鮮于乞が翟真と諸翟人を殺害し、自ら趙王を名乗りました。しかし、鮮于乞はすぐに殺され、翟真の従弟である翟成が新たな主として擁立されました。しかし、その多くは後燕に降伏し、翟遼は黎陽へと逃れました。

386年1月、黎陽に逃れた翟遼は、黎陽郡太守の滕恬之に重用されました。しかし、滕恬之が士卒からの信頼を得ていないことを見抜いた翟遼は、密かに策略を練りました。滕恬之が南の鹿鳴城を攻めた隙に、後方にいた翟遼は城門を閉ざして滕恬之を閉じ込め、東の鄄城へ逃れようとした滕恬之を捕えて黎陽を乗っ取りました。これに対し、豫州刺史の朱序は将軍の秦膺と童斌を派遣し、淮・泗の諸郡と共に翟遼を討伐しました。3月には、泰山郡太守の張願が郡ごと翟遼に降伏しました。8月、翟遼は譙で略奪を行い、朱序に撃退されました。

387年1月、翟遼は子の翟釗に陳・潁を略奪させましたが、朱序が派遣した秦膺に撃退されました。4月、高平の翟暢は太守の徐含遠を捕え、郡ごと翟遼に降伏しました。5月、後燕の慕容垂は自ら諸将を率いて南の翟遼を攻め、太原王の慕容楷を前鋒都督としました。翟遼の兵の多くは燕・趙の出身であったため、慕容楷が攻めてくることを聞くと次々と帰順しました。恐れた翟遼は使者を送って降伏を願い出ました。慕容垂はこれを受け入れ、翟遼を徐州牧・河南公に封じて帰還しました。しかし、同年10月、翟遼は後燕に叛旗を翻し、王祖や張申と共に清河郡・平原郡を略奪しました。

建国後

388年2月、翟遼は司馬の眭瓊を後燕に派遣して謝罪しましたが、慕容垂はこれを受け入れず、眭瓊を斬って関係を断絶しました。これを受け、翟遼は自ら魏天王と称し、建光と改元し、百官を設置しました。同年5月、翟遼は滑台に拠点を移しました。

建光2年（389年）4月、翟遼は滎陽を略奪し、太守の張卓を捕えました。10月には、後燕の楽浪王である慕容温が冀州刺史となると、翟遼は丁零人の故堤に偽りの降伏をさせて慕容温の帳下に入れ、慕容温を殺害させました。

建光3年（390年）1月、豫州刺史の朱序は翟遼を撃ち破りました。8月、劉牢之は翟釗を鄄城で破り、翟釗は河北へと逃走しました。劉牢之はさらに翟遼を滑台で破り、張願が降伏しました。

建光4年（391年）10月、翟遼は死去し、子の翟釗が後を継いで定鼎と改元しました。

もう一度検索