独孤部

独孤部：北魏を支えた匈奴系名門貴族の興亡

独孤部（どっこ ぶ）は、中国の五胡十六国時代に存在した匈奴の一派、屠各種に属する部族です。彼らの子孫である劉氏・独孤氏は、北朝から隋唐時代にかけて名門貴族として名を馳せました。

概要：匈奴から北魏へ、そして貴族へ

独孤部の氏族名は劉氏であり、その源流は南匈奴の有力者、劉猛の子である劉副侖に遡ると考えられています。劉副侖が鮮卑の拓跋部に帰順して以来、特に劉路孤が帰順した318年以降、独孤部は拓跋氏（後の元氏）と婚姻関係を結び、その地位を確立していきます。

例えば、代王の拓跋鬱律は劉路孤を婿とし、拓跋什翼犍は劉庫仁に娘を娶らせています。また、劉眷は拓跋珪（後の北魏の道武帝）に娘（宣穆皇后）を後宮に入れています。独孤部は、軍事面でも重要な役割を担っており、劉庫仁は代国の南部大人として南部を統括し、代国崩壊後も前秦の支配下で東部を統括、拓跋珪を庇護し、北魏建国の大きな後ろ盾となりました。

しかし、劉眷の後を継いで独孤部大人となった劉顕は、拓跋珪を幾度も亡き者にしようと謀り、最終的には魏王となった拓跋珪によって討たれました。これにより、部族としての独孤部は、道武帝による「諸部解散」政策によって一度は解体されます。しかし、劉眷の子である劉羅辰が北魏の南部大人に任じられて以降、その一族は代々重要な地位を占め、北魏の名門貴族、劉氏・独孤氏として繁栄していくことになります。その後も、劉氏・独孤氏は北朝・隋唐時代を通じて、中国を代表する名門貴族として名を残しました。

一方、後漢の光武帝の子である沛献王劉輔の末裔を称した度遼将軍の劉進伯が、匈奴との戦いで大敗し、孤山で捕らわれの身となり、そのまま匈奴の女性との間に劉尸利を儲け、その劉尸利が独孤部の祖であるという説も存在します。

また、李淵（唐の初代皇帝）の母方の親族である独孤蔵は、漢王朝の皇族の血を引いていると主張しました。しかし、この主張は独孤蔵の墓誌にのみ見られ、父である独孤信の墓誌や『周書』には同様の記述はありません。このことから、独孤氏が後漢の光武帝の末裔を自称するようになったのは、唐の支配層に対する社会的威信を高めるための手段であったと考えられています。つまり、政治的粛清を逃れて匈奴に亡命したという家系を捏造した可能性があります。

名称の由来：屠各種との関係

独孤部の系統は、代々単于を輩出してきた匈奴の中心種族である屠各の後裔であり、「独孤（Dúgū）」という名称は「屠各（Tūgè）」と同じ原語（tuγ-laγ：旗を持つ者）を異字で写したものであると考えられています。同じく匈奴系の部族である攣鞮部や鉄弗部なども同族とみなされています。

歴代独孤部大人

以下は、『新唐書』宰相世系表を基にした独孤部の大人（部族長）の系譜です。ただし、『魏書』から確実に確認できるのは、劉庫仁以降となります。

劉尸利…劉進伯の子、谷蠡王
劉烏利…劉尸利の子
劉猛…劉烏利の子、羌渠（攣鞮部を継ぐ）、去卑の弟
劉副侖…劉猛の子
劉路孤…劉副侖の子
劉庫仁（? - 383年）…劉路孤の子、代国南部大人
劉眷（383年 - 385年）…劉庫仁の弟、代国北部大人
劉顕（385年 - 387年）…劉庫仁の子
* 劉羅辰…劉眷の次男

独孤部は、匈奴という出自を持ちながらも、北魏という新たな国家体制の中でその地位を確立し、名門貴族として歴史に名を刻みました。彼らの興亡は、中国の南北朝時代の社会構造や政治情勢を理解する上で、重要な要素の一つと言えるでしょう。

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